artscapeレビュー

人が消えた町

2020年10月01日号

会期:2020/09/11~2020/10/09

チェコセンター[東京都]

6月11日~28日に東京・目黒のコミュニケーションギャラリーふげん社で開催された「東京2020 コロナの春」展は、新型コロナ感染症による緊急事態宣言下の日本の状況を、いち早く捉えた写真を展示した企画展だった。コロナ禍がどのような影響を写真の世界に及ぼしていくのかはまだ不透明だが、写真家たちのヴィヴィッドな反応を見ることができたのはとてもよかったと思う。

今回、東京・広尾のチェコセンターで開催された「人が消えた町」は、その余波というべき展覧会である。外出自粛、営業制限といった規制はチェコでも同じように施行され、プラハの街からも人影が消えた。チェコの写真家、カレル・ツドリーンは、「この状況もいつかは終わり、記憶の片隅に追いやられてしまうかもしれない。だからこそ今、作品に残したい」と考えて撮影を開始した。マスクをつけた人々が、空虚感が漂う路上を彷徨っているような写真の眺めは、われわれ日本人にとっても身に覚えのあるものといえるだろう。

今回は、ツドリーンのモノクローム作品10点に加えて、「東京2020 コロナの春」展に出品していた11人の写真家たちの作品も出品されていた。土田ヒロミ、大西みつぐ、港千尋、Area Park、元田敬三、普後均、田口るり子、小林紀晴、藤岡亜弥、オカダキサラ、Ryu Ikaの作品は、ふげん社の展示でも見ているのだが、どこか印象が違う。チェコの写真家の重々しく、物質性の強い人や街の表現と比較して、日本在住の写真家たちの作品が細やかだが、やや希薄に見えてくるのが逆に興味深かった。チェコの写真家たちのグループ展は、以前何度か企画・開催されたことがあるのだが、これを機会に本格的な交流展が実現するといいと思う。

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