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ベゾアール(結石) シャルロット・デュマ展

2020年10月01日号

会期:2020/08/27~2020/11/29

メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]

オランダの女性アーティスト、シャルロット・デュマは、2014年から北海道、長野、与那国島など、日本各地に群生する野生馬を撮影し、作品化してきた。2016年にはGallery916(東京)で、写真展「Stay」を開催しているが、今回はオブジェや映像作品を含めた広がりのある展示になっていた。メゾンエルメス フォーラムの展覧会は、いつも行き届いたインスタレーションなのだが、今回は特に作品の構成・配置がうまくいっていたと思う。

馬は神話的といってよい動物で、時にその雄々しさや生殖力、パワフルな躍動感などが強調される。デュマのアプローチはその対極というべきもので、馬たちはむしろ優しげに人に寄り添い、大気と同化し、静かにたたずむ姿で描かれている。今回の展示では、埴輪、木馬、瓢箪、馬轡、腹帯、さらに馬の胃の中に形成される丸い結石などのオブジェを効果的に配することで、人と馬とが強い絆で結ばれながら共生してきた歴史を、さまざまな角度から辿り直していた。与那国島の少女「ゆず」と彼女の愛馬「うらら」が登場する《潮》(2018)、馬の衣装を身につけたデュマの娘が、オランダから与那国島を訪れるロード・ムービーの《依代》(2020)の2つの映像作品も、撮影・編集ともに素晴らしい出来栄えである。日本の在来馬をテーマにしたプロジェクトはまだ進行中のようなので、さらなる展開が期待できそうだ。

2020/08/27(木)(飯沢耕太郎)

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