2020年11月15日号
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artscapeレビュー

清水哲朗「トウキョウカラス」

2020年10月01日号

会期:2020/09/01~2020/09/27

JCIIフォトサロン[東京都]

1975年、横浜市生まれの清水哲朗は、2005年に「路上少年」で第一回名取洋之助写真賞を受賞し、2016年には、近代化が進むモンゴルの状況を捉えた写真集『New Type』(日本カメラ社)を刊行するなど、このところ注目を集めているドキュメンタリー写真家である。本作「トウキョウカラス」は、その彼の「幻のデビュー作」になる。

日本写真芸術専門学校を卒業して、竹内敏信の助手を務めていた1995年から、清水は東京の渋谷や銀座に群れ集うハシブトガラスを撮り始めた。都会にねぐらを作り、餌を採り、家族で子育てをするカラスたちの「カッコイイ、理想の生きかた」に憧れたのが動機だったという。当時、3万羽と言われた東京のカラスは、その禍々しい見かけと、ゴミを漁って食い散らかしたり、人を襲ったりすることで忌み嫌われ、「捕獲作戦」が展開されていた。だが、やはり清水が当時追いかけていたネズミと同様に、カラスのような人間と共存する生き物のあり方は、都市における自然環境について考えるいい指標になる。清水のアプローチは、動物写真家たちの生態写真とも、深瀬昌久の『烏』のような自己表現とも異なる、まさにドキュメンタリー写真的というべきユニークなものになっていた。残念なことに、8年間にわたって続けられ、35ミリフィルム235本、中判フィルム11本に達したというこの労作は、なかなか発表の場に恵まれなかった。今回のJCIIフォトサロンでの展示で、ようやく陽の目を見ることになったのは、とてもよかったと思う。

2019年6月に銀座ニコンサロンで開催された原啓義の個展「そこに生きる」では、銀座を徘徊するネズミたちにスポットが当てられていた。今回の清水の作品も含めて、「都会の動物たち」の写真展や写真集の企画も成り立つのではないだろうか。

2020/09/18(金)(飯沢耕太郎)

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