2021年12月01日号
次回12月15日更新予定

artscapeレビュー

TOKYO MIDTOWN AWARD 2020

2020年11月01日号

会期:2020/10/16~2020/11/08

東京ミッドタウン プラザB1[東京都]

アートとデザインの2部門のコンペ。「DIVERSITY」をテーマにしたデザインは、入選作を陳列ケースに入れて一列に並べているので見やすいが、テーマ自由のアートは、「東京ミッドタウンという場所を活かしたサイトスペシフィックな作品」という条件つきなので、あっちこっちに散らばって探すのが大変。ま、それがサイトスペシフィックたるゆえんなのだが。

なかでもサイトスペシフィックの極北を行くのが、船越菫の《つながり》。地下プラザの壁の凹んだ部分にぴったりハマるようにキャンバスをつくり、緑の植物をピンボケで撮ったような壁の模様をそのままキャンバスにつなげて油絵で描いている。つまり絵が壁に擬態しているのだ。これは見事。いちおう絵の前にはプレートを立てて作品であることを明示しているのだが、道行く人の大半は気づかないし、気づいたところで壁がもう1枚あるだけなので通り過ぎてしまう。それほど見事に壁と同化しているのだが、作者としてはこうした手応えのなさを成功と見るか、失敗と見るか、微妙なところ。それに、この「壁画」はこの場所以外に展示できないし、たとえ展示できてもまるで意味がない。だから会期が終わればこの絵の有効期限も切れてしまう。その意味で、まさにこの場所、この期間だけのテンポラリーな「不動産美術」と言うほかないのだ。



船越菫《つながり》[筆者撮影]


その隣の川田知志による《郊外観光~Time capsule media 3》も、優れてサイトスペシフィックな作品だ。これも壁面に穴だらけのボロボロのトタン塀を置き、向こう側に植栽や看板があるかのように描いている。一種のトリックアートであり、のぞき見趣味であり、なによりこぎれいなミッドタウンにダウンタウンの雑音を持ち込んだ批評精神を評価したい。この作品はほかの場所でも展示できるが、やはりこの場で発想された以上、この場でこそ破壊力を発揮できるだろう。ちなみに船越も川田も京都市芸(ウリゲーじゃないよ)の油画出身なのは偶然だろうか。


川田知志《郊外観光~Time capsule media 3》[筆者撮影]


この2作品以外はサイトスペシフィックとは言いがたいものの、いずれ劣らぬ力作ぞろい。坂本洋一の《Floating surface》は、4カ所で支えた黒いヒモを上下に動かし、あたかも波のように見せる作品。波といえばいまだ津波を思い出し、また、かつては六本木にも波が打ち寄せていたかもしれないことを再確認させてもくれるのだが、それ以上にたった1本のヒモだけで波を表現してしまう技術力に感心する。

和田裕美子の《微かにつながる》は、髪の毛をつなげてチョウやテントウムシのレース模様に編み上げたもの。おそらく公共の場でのコンペなので、当たり障りのない人とのつながりや虫のモチーフを前面に出したのだろうけど、誰のものともしれぬ髪の毛を編む行為は、ナチスの蛮行について教わった世代から見れば薄気味悪さを感じるし、スケスケのレース模様の全体像がブラジャーかパンティを連想させるのも、憎い仕掛けといえる。作者はかなりの確信犯だな。で、コンペの結果は、船越がグランプリ、川田が準グランプリ。真っ当な結果だと思う。

2020/10/20(火)(村田真)

2020年11月01日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ