artscapeレビュー

関本幸治「光をまげてやる」

2020年11月01日号

会期:2020/09/09~2020/09/27

京都場KYOTOba[京都府]

京都国際写真祭の「KG+2020」の枠で、関本幸治の展覧会を見ることができた。なかなかユニークな写真を使った展示である。関本は1969年に神戸市に生まれ、1994年に愛知県立芸術大学大学院を修了後、96年に渡独して2003年までケルンに滞在した。帰国後は2009年に東京から横浜に移って制作活動を続けている。

一言でいえば、関本の作品は現代版の「活人画」(タブロー・ヴィヴァン)といえるだろう。「活人画」というのはそれらしい衣装を身につけ、メーキャップを施した演者が、静止して、物語の中の一場面のポーズをとる見世物である。関本は人間の代わりに人形を用いる。紙粘土などで、等身大よりもやや小さめの精巧な人形を制作し、衣装も自分で縫い、背景を描き、小道具を揃え、ジオラマ風の舞台をしつらえる。最終的には、それを写真撮影して作品として提示するのだ。今回は展示会場の京都場に、「正義の女神」を表象する「Lady Justice」を制作したセットが、写真作品とともにそのまま再現されていた。

テクニックは完璧であり、写真も実際の場面を撮影したのではないかと疑ってしまうほどの臨場感がある。とても面白い試みだと思うが、関本がなぜその場面に固執しているのかという理由づけが、うまく伝わってこないもどかしさも感じた。最終的に、一枚の写真に集約するのではなく、テキストと写真とを融合させて、複数の場面から成る長編の「物語」を編み上げるというのはどうだろうか。可能性を感じる仕事なので、さらなる展開を期待したい。

2020/09/24(木)(飯沢耕太郎)

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