2021年01月15日号
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artscapeレビュー

生誕100年 石元泰博写真展 生命体としての都市

2020年11月01日号

会期:2020/09/29~2020/11/23

東京都写真美術館2階展示室[東京都]

「生誕100年」ということで、東京都写真美術館、高知県立美術館、東京オペラシティアートギャラリーの3館共同企画として「石元泰博写真展」が開催される。その第一弾として、東京都写真美術館で「生命体としての都市」展がスタートした。

石元がドイツのバウハウスの流れをくむアメリカ・シカゴのインスティテュート・オブ・デザインで写真を学び、まずシカゴで写真家としてのキャリアを積んだことはよく知られている。その後1953年に来日後は、主に東京を拠点に写真を撮影するようになった。本展では、そのシカゴと東京という二つの都市で撮影された写真群を中心に、「桂離宮」、「色とかたち」、「刻(とき)」といった、多面的な広がりを持つ仕事が紹介されていた。あらためて驚かされたのは、常に新たな領域にチャレンジし、それまでのスタイルを更新していこうとする、石元の強烈な表現意欲である。特に今回の展示を見て、シカゴで身につけた「造形」的に画面をまとめてしまう写真のあり方に対して、写真家のコントロールを超えた偶発性を積極的に取り込んでいくことを、彼が生涯にわたって追求していったことがよくわかった。最晩年の作品「シブヤ、シブヤ」で、スクランブル交差点に屯する若者たちのTシャツの背中の文字をノーファインダーで執拗に描写していく姿に、石元の写真家としての姿勢が凝縮されているのではないだろうか。

なお同時期に、東京オペラシティアートギャラリーでは、「石元泰博写真展 伝統と近代」展が開催されている(2020年10月10日~12月20日)。初期作品をはじめとして、「日本の産業」、「周縁から」、「イスラム 空間と文様」、「両界曼荼羅」、「食物誌/包まれた食物」など、あまり展示されることのないシリーズを含む、500点近い大規模展である。これらの作品を含めて、既に評価が定まっていると思われがちな石元の写真世界には、まだ未知の可能性が潜んでいるのではないかと感じた。今回の「生誕100年」展をきっかけに、新たな石元像が浮かび上がってくることを期待したい。

2020/09/29(火)(飯沢耕太郎)

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