2021年01月15日号
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artscapeレビュー

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2020

2020年11月01日号

会期:2020/09/19~2020/10/18

伊藤佑 町家、ほか[京都府]

8回目を迎えた「京都国際写真祭」だが、今年は大きなトラブルに見舞われた。コロナ禍でいつものように4月~5月の開催ができなくなり、9月~10月に延期されたのだ。一部のスポンサーが撤退したことで、資金的にかなり厳しい状況でもあった。だが、逆にやや過剰に膨らみつつあった企画を整理できたことで、すっきりとシェイプアップされた展示が実現していた。スタートしたばかりの頃の、規模は小さいが志の高い写真イヴェントという原点に戻ることができたのではないだろうか。

町家や寺院といった、やや特異な造りの会場をうまく活用した展覧会の企画は、「京都国際写真祭」の最大の特徴だが、今回は下京区の伊藤佑 町家で開催された福島あつしの写真展「弁当 is Ready」と、オランダの女性アーティスト、マリアン・ティーウェンの「Destroyed House」が出色の展示だった。川崎市で10年間、高齢者向けの弁当配達の仕事をしながら撮り続けた福島の作品は、現代日本が抱え込む社会問題に新たな光を当てる力作である。ティーウェンは、取り壊される家から出る廃材や塵芥を部屋の中に積み上げるインスタレーション作品を制作する作家だが、今回は町家の2部屋の内部に、壁、柱、梁、階段などの材料を組み直した空間を新たに構築した。素晴らしい出来栄えで、会期終了後も残しておいてほしいほどだ。

ほかにも、木村伊兵衛写真賞を受賞したばかりの片山真理の個展(嶋臺ギャラリー)、1970年代の京都を撮影したスナップ写真を鴨川べりに野外展示した、甲斐扶佐義の「鴨川逍遥」、昭和の匂いが色濃く漂う出町桝形商店街の人々を撮影し、コラージュ的なポートレートを制作してアーケードに展示した、セネガル出身のオマー・ヴィクター・ディオプの《MASU MASU MASUGATA》など、印象深い展示がたくさんあった。サテライト展の「KG +」の枠での展覧会も、会期変更にもかかわらず60会場以上で開催されて活気を呈していた。外国から訪れる観客が少なくなったのは残念だが、イヴェントとしては成功だったのではないだろうか。

公式サイト: http://www.kyotographie.jp/

2020/09/24(木)(飯沢耕太郎)

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