2021年01月15日号
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artscapeレビュー

写真新世紀 2020

2020年12月15日号

会期:2020/10/17~2020/11/15

東京都写真美術館[東京都]

1991年にスタートしたキヤノン主催の写真公募展「写真新世紀」は、今回で43回目を迎えた。当初は年4回で、年2回公募していた時期もあったので回数が増えているが、近年は年1回の公募に落ちついている。とはいえ、既に30年近く続いているわけで、立ち上げにかかわった評者にとっては感慨を禁じ得ない。

「写真表現の新たな可能性に挑戦する新人写真家の発掘・育成・支援を目的とする公募企画」という趣旨に変わりはないが、もはや写真=静止画像という思い込みは成立しなくなっている。今回の展示でも、グランプリを受賞した樋口誠也「some things do not flow in the water」(野村浩選)をはじめ、宮本博史「にちじょうとひょうげん―A2サイズで撮り溜めた、大阪府高槻市・寺田家の品々―」(椹木野衣選)、立川清志楼「写真が写真に近づくとき」(オノデラユキ選)が映像作品だった。後藤理一郎「普遍的世界感」(安村崇選)は静止画像の作品だが、モニターでスライド上映している。静止画像と動画の境界線はもはやほとんどなくなってはいるが、作品を前にしたときの視覚的経験にはやはり大きな違いがある。そのあたりは、もう少し意識的に考えるべきではないだろうか。

佳作作品を含めて、上位入賞作品のクオリティは以前に比べて格段に上がってきている。だが、圧倒的な感動を与える作品はなかった。もしかすると、あまりにもすっきりとした展示を求め過ぎて、個々の作家が思い込みから発するノイズが削ぎ落とされていることもその理由なのではないかと思う。以前は、展示構成において、写真家たちの生々しい表現欲求が、もう少しストレートに出ていたのではないだろうか。今回の上位入賞作品は、そのあたりがやや希薄だったが、前年度のグランプリ受賞作家、中村智道の特別展示「Ants」には強烈なこだわりを感じた。「蟻を見る自分、そして蟻を見るように見られる自分、抗うことが出来ない巨大な力によって見られる自分という観点から」構築された作品には、切実なリアリティがある。

2020/11/04(水)(飯沢耕太郎)

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