2021年01月15日号
次回2月1日更新予定

artscapeレビュー

DEPTH DESIGN 1st EXHIBITION

2020年12月15日号

会期:2020/11/19~2020/11/26

TIERS GALLERY[東京都]

印刷物をルーペで初めて覗き見たときの驚きをいまでも忘れられない。すべてが小さなドットで構成された世界がそこにはあった。特色を除く、通常のカラーはCMYKの4色で印刷されることを頭ではわかっていたにもかかわらず、実際に見る網点には何とも言えない迫力があった。本展を観て、そんな出来事をふと思い出した。本展を企画したDEPTH DESIGN(デプスデザイン)は、親会社のトヨコーと組み、壁面塗装によるパブリックアートの表現方法を研究している会社である。その代表取締役社長兼アートディレクターを務めるのが、デザイナーの清水慶太だ。設立されて間もない同社が、世間へのお披露目と同時に、パブリックアートの可能性を問うため展覧会を開いた。最初に観た作品「GRAY」はまさにCMYKの4色の原理を用いた実験作で、紙にインクではなく、壁にペンキで施されていた。実際に親会社の東京オフィスの内壁に用いられたそうで、遠目で見ると、4色のドットはグレーに映る。

展示風景 TIERS GALLERY

一般的にパブリックアートというと、巨匠アーティストによる、大衆の目を引く奇抜な作品というイメージが強い。それはそれで街や公園などにパワーをもたらし、また観光名物となることも多い。しかしDEPTH DESIGNの考えはむしろランドスケープデザインの延長上にあるようだ。公共空間を主に壁面塗装を用いていかに良いものへと変えられるかを模索する。「壁と景色」と題した作品では、街の景色は壁面の群によって印象づけられることを実証するため、立体模型を使い、街並みの一部を再現。これらの壁面に物語性のある色やパターン(濃霧や波、木々、アーチ)をプロジェクションマッピングで施し、街の景色がどのように変化するのかを実験していた。こうして見ると、壁面が街に与える影響の大きさに改めて気づく。

展示風景 TIERS GALLERY

一方で街の景観を損ね、治安悪化のイメージを与えるとされる壁面の落書き(グラフィティー)にも注目。主に文字表現が多いグラフィティーは、描き手からの何らかのメッセージではないかと肯定的に受け止め、グラフィティーを立体作品に転化する試みを行なった。これがベンチとして使用可能な立体作品に生まれ変わると、不思議と印象が変わる。たとえ街に置かれても、治安悪化のイメージにはあまりつながらないだろう。公共空間のあり方を考えるには、ミクロとマクロの両方の視点が大事になる。本展ではこの視点を生かした、柔軟な発想に基づく作品が観られた。

展示風景 TIERS GALLERY


公式サイト:https://depthdesign.co.jp/

2020/11/21(土)(杉江あこ)

2020年12月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ