artscapeレビュー
原麻里子「picture window」
2020年12月15日号
会期:2020/11/04~2020/11/16
ニコンサロン[東京都]
原麻里子は1982年、東京生まれ。2005年に東京造形大学デザイン学科環境計画専攻を卒業している。同大学在学中から写真に興味を抱き、写真家の高梨豊や白岡順の講義も受講していたという。
今回の作品は東京・深大寺の自宅の窓からの眺めを柱として、夫や子供たちとの日常をスナップした写真を配したものだ。横長の窓の向こうには植物が生い茂る雑木林があり、その一画が切り拓かれて二階建てのアパートが建てられようとしている。その建造のプロセスを定点観測的に撮影した写真群が全体の3分の1ほどで、あとは室内の情景が淡々と並ぶ。その「外」と「内」の写真の配合と配置が絶妙で、静かだが微妙な波風が立つ暮らしの様子、その手触り感がきちんと伝わってきた。出品作の中に、画面の上下をカットして、「picture window」をやや大きめのパノラマサイズで見せたプリントがあり、それがうまく展示の流れを作っていた。ただ、他の写真は同一サイズなので「外」と「内」との対比がくっきりと見えてこない。窓の写真をすべてパノラマサイズにして、メリハリをつけるという選択肢もあったかもしれない。
撮影はまだ続くということなので、窓からの眺めも室内の情景も、今後少しずつ変わっていくのではないだろうか。その変化に対応して、作品の見え方も違ったものになっていくはずだ。力のある写真家なので、このシリーズだけにこだわる必要はないだろう。「picture window」の撮影は続けながら、ぜひ別なテーマにも取り組んでいってほしい。
2020/11/13(金)(飯沢耕太郎)