artscapeレビュー
井津健郎「ETERNAL LIGHT 永遠の光」
2021年02月01日号
会期:2020/11/25~2021/02/13
gallery bauhaus[東京都]
井津健郎は1949年、大阪生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、1971年に渡米し、ニューヨークで写真家としての活動を続けてきた。14×20インチの大判カメラで世界各地の「聖地」を撮影し、プラチナ・プリントで仕上げた作品を発表し続けてきたが、今回のインドのガンジス川、ヤムナ川の流域のベナレス、アラハバッド、ヴリンダバンの3都市で、2013-15年に撮影したシリーズは、これまでとはかなり趣が違っていた。
大きな違いは、中判のハッセルブラッドカメラを使っていることで、そのことによって被写体との距離の取り方、画面構成がより自由でのびやかなものになっている。また、これまではどちらかといえば遺跡や風景にカメラを向けることが多かったが、本作では人間が主なテーマになった。ベナレスの孤児院やホスピス、ヴリンダバンで12年に一度行なわれるヒンドゥー教の祭礼に集う巡礼者たちの姿を捉えた写真群には、長年にわたって鍛え上げてきた被写体のフォルムをしっかりと定着させる能力が充分に発揮され、堂々たる、見応えのある作品として成立していた。
井津は近年、デジタルバックの中判カメラも使い始めた。そちらの作品は「ポンペイ鎮魂歌─POMPEII/REQUIEM」(富士フイルムフォトサロン東京スペース3、2020年11月13日〜26日)と「抚州・忘れられた大地」(富士フイルムイメージングプラザ東京 ギャラリー、2020年11月18日〜12月7日)の両展で発表されている。 gallery bauhausでの展示も含めて、新たな写真機材を導入することで、表現の領域を拡張していこうとする強い意欲を感じる。30年以上にわたる「聖地」の探究が、より豊かな広がりを持つ、次のステップに進んでいくことを期待したい。
2020/12/08(火)(飯沢耕太郎)