artscapeレビュー
千葉正也個展
2021年02月01日号
会期:2021/1/16~2021/3/21
東京オペラシティアートギャラリー[東京都]
千葉の絵は、自ら粘土をこねた人物みたいな彫刻を中心に、植木や水槽、ナイフ、靴など身の回りのものを寄せ集めて描いたもの。あえて分類すれば静物画だが、背景はグレーに塗りつぶされたり、アメリカ西部の風景だったりする。その粘土彫刻にはいろいろと意味がありそうだが、いずれにせよそれらのモチーフを机や棚に載せて、達者なテクニックで克明に描いていく。その絵自体何ともいえず魅力的なのだが、今回はそれをとんでもない展示方法で見せている。
会場に入ると、壁に絵はなく、ギャラリー中央に設けられた細い通路が目に入ってくる。絵は通路の両脇に、しかも通路に向いて並んでいるのだ。なんだこれは? と思いながら通路沿いに作品を見ていくと、カメがのそのそと通路上を歩いているのに出くわす。千葉が飼ってるリクガメのローラで、通路は彼(オスらしい)の散歩道だそうだ。だから通路沿いにビルボードみたいに立っている絵は、ローラが散歩がてら見るために並べられているのだ。その散歩道には起伏があったり広場があったり、隣のギャラリーに行くために壁にトンネルを開けたり、絵のモチーフに使われる粘土彫刻などが置かれていたり。こんな絵画展、これまであっただろうか。
今回はさらに、他人の顔に千葉が自画像を描いて紙に転写した「顔拓」とその映像や、ホットカーペットに担当キュレーターやギャラリースタッフの肖像を描いたシリーズも出している。特にキュレーターの肖像は床に敷かれていて、まるで踏み絵。みんな喜んで踏むだろうね。会場の隅にはベニヤ製の手形が四方を指している彫刻が置かれていて、なにかと思ったら、その手形の指す方向を見ると、貴乃花や若乃花のホンモノの手形が壁に貼ってあるではないか。これは楽しい。
ふつう絵画の展覧会でこんなことをすると気を
2021/01/15(金)(村田真)