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山田脩二「新版『日本村』1960−2020 写真プリントと印刷」

2021年02月01日号

会期:2020/12/11~2021/01/24

kanzan gallery[東京都]

山田脩二の『新版『日本村』1960―2020』(平凡社)は、タイトルが示すように彼が60年にわたって撮影してきた586枚に及ぶ写真をまとめた大冊である。本展示は、その刊行にあわせて菊田樹子のキュレーションで開催された。

「日本村」のシリーズは、山田が大阪万国博覧会の開催に沸く1970年に、中古車で日本全国3万キロを移動して撮影した写真群を、『SD』(1972年3月号)に「日本村/今」と題して発表した事に端を発する。その後、1979年に篠山紀信、磯崎新が「写真構成」を担当した写真集『日本村1969―1979』(三省堂)に集成された。だが、今回の出版や展示は、その「伝説の写真集」をさらに拡充し、厚みを加えたものになった。前作の写真集に収録された写真はもちろんだが、桑沢デザイン研究所卒業後、フリーの写真家として活動し始めた時期の初期作品や、『日本村1969―1979』刊行後に撮影したニューヨークや上海の写真、1982年に「カメラマンからカワラマンに」転身して、淡路島で炭焼きを始めてから後の仕事も含んでいる。写真集の最後のパートに掲載されているのは、「2000・01・01」の日付入りの「西淡町・慶野瀬戸内の夕景」である。

さらにkanzan galleryの展示では、「山田脩二の手焼きプリント、ネガからのラムダプリント、写真集の印刷の過程で制作された色校正」などもあわせてインスタレーションして、彼のカオス的な写真世界の全体像を浮かび上がらせようとした。そこから見えてくるのは、個々の光景の細部だけではなく、むしろ都会でも田舎でも等価に見通していく山田の視線のあり方であり、20世紀後半から21世紀かけての「人の住む場所」の手触りの集積としかいいようのない、熱量の高い写真群である。「日本村」は、たしかに山田が生まれ育った「日本」の姿を丸ごと捉えようとする営みだが、その射程はニューヨークや上海も含めて大きな広がりを持っていることをあらためて確認することができた。その意味では展示スペースが小さすぎるし、写真の数もまだ物足りない。どこかの美術館で、ひと回りもふた回りも大きい展覧会の企画を実現してほしいものだ。

2020/12/11(金)(飯沢耕太郎)

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