2021年04月15日号
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artscapeレビュー

千葉市美術館拡張リニューアルオープン・開館25周年記念 宮島達男 クロニクル 1995−2020

2021年02月01日号

会期:2020/9/19~2020/12/13

千葉市美術館[千葉県]

宮島の作品はしばらく見ていなかったなあ。美術館の常設コレクションでたまに目にすることはあるけれど、ある程度まとめて見るのは、森美術館の「STARS」展と今回の個展が久しぶりな気がする。そう思ってカタログの年表を調べてみると、なんと2000年の東京オペラシティでの個展以来、じつに20年ぶりと判明。なぜ見なくなったのかというと、ひとつには日本より海外での発表が増えたから。これは仕方がないというか、よいことだ。二つ目は、海外が増えたのは広くアーティストとして認められたということであり、エラそうにいえば、ぼくが見る必要がなくなったということだ。見ていてワクワクするのはエマージングの段階であって、宮島はもうその域を超えてしまったからだ。三つ目は、そのころから「Art in You」を提唱し、芸術による平和を唱えるなど、ヒューマニズムが前傾化してきたから。それ自体は悪いことではないが、それが前面に出てくると違和感も増してくるのだ。

と、見なかった弁解を長々書いたが、久しぶりに見てどうだったかというと、案外おもしろかった。作品は相変わらずデジタルカウンターなのだが、それをここまで拡大するかというくらいさまざまなかたちで見せているからだ。展示はタイトルにもあるように、1995年から2020年までの4半世紀の作品に絞っている。1995年というと戦後50年に当たり、阪神大震災や地下鉄サリン事件など時代を画する災害が起き、宮島が「柿の木プロジェクト」を始めた年でもある。加えて、千葉市美術館が開館したのもこの年だ。

展示の前半は、身体を使ったパフォーマンスや多くの人たちを巻き込んだプロジェクトを中心に紹介。赤ワインや墨の中に顔を浸けて10カウントしたり、顔や身体の一部にデジタル数字を書いたりするパフォーマンスの記録映像を見せているが、パフォーマーは本人だけでなく、西洋人、東洋人、日本人など多彩な人種を選んでいる。10進法は世界共通なので、液体の種類や肌の色を変えることで多様性を確保したともいえる。長崎で被爆した柿の木の2世を各地に植樹する「時の蘇生・柿の木プロジェクト」は、学生時代に対峙したヨーゼフ・ボイスの「7000本の樫の木」に触発されたプロジェクトだろう。日本でその後ブームになる「アートプロジェクト」の先駆けとなった。

後半は数字を描いたドローイング、LEDのデジタルカウンターを用いたオブジェやインスタレーションの展示。ドローイングといってもただ紙に数字を書くだけでなく、裁断前のドル紙幣を数字の形に焼いたり、楽譜を切り取ったりあれこれ試しているし、デジタルカウンターも鏡面に取り付けたり模型機関車に乗せたりプールの底に沈めたり、さまざまなバリエーションを試みている。もちろんそれぞれに意味づけされているが、それをひとまず置いても楽しめるのは、チカチカと数字が変わることに加え、手を替え品を替えアイディアを繰り出す宮島のサービス精神ゆえではないだろうか。

一室に、千葉市美術館のコレクションから選んだ河原温、菅井汲、杉本博司、中西夏之、李禹煥の5作家による作品とコラボレーションする《Changing Time/Changing Art》というインスタレーションがあった。陳列ケースのガラスを鏡面状にしてデジタル数字の形に抜き、その透明な窓を通して5人の作品をかいま見るというものだ。自分の作品と先輩アーティストの作品を重ねたこの作品から、彼らに対する尊敬の念とともに強烈な自負も伝わってくる。デジタルを使いながら人柄がにじんでくる個展であった。

2020/12/12(土)(村田真)

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