2023年11月15日号
次回12月1日更新予定

artscapeレビュー

大宇根によるレンガと町田の建築群

2022年11月01日号

[東京都、宮城県]

町田市の大宇根建築設計事務所を訪問し、さまざまな作品を案内してもらった。事務所が入る幹ビルもそのひとつだが、徒歩圏のビルや学校群などを含めて、同市内で実に多くの建築を手がけている。しかも共通する特徴をもち、いずれもレンガ、もしくはタイルが外壁に使用されており、一般人にもなじみやすいキャラクターを獲得していた。

もともと大宇根弘司は、前川國男の事務所で長く働いていたことで、耐候性をもつ打ち込みタイルに精通し、1982年に独立した後も、外壁を保護する建材の探究を継続するなかで、レンガの可能性に注目していたからである。最初に手がけた《町田市立国際版画美術館》(1986)では、質感や焼成方法を何度もテストし、温かいベージュ色の風合いを実現したという。そして水路などの外構も設け、公園の施設として長く市民に親しまれてきた。しかし、現在、国際工芸美術館を含むパークミュージアム構想が立ち上がり、版画美術館の内部を生活通路が貫通することで、大宇根はもとの考え抜かれたデザインと空間のアイデンティティが毀損されることを問題視している。



《町田市立国際版画美術館》


ほかにも市民文学館、《町田市民文学館 ことばらんど》(2006)、《青少年施設ひなた村》(1993)、榎本学園による各種の専門学校(保育1989年、調理師1998年、美容2012年、製菓2005年)、住宅などが町田に点在し、それぞれに異なるレンガの表現を展開していた。時間が経過しても耐久性のある素材が、豊かな表情を与えている。



《青少年施設ひなた村》




町田の美容専門学校、奥は福祉保育専門学校


また同一の建築家が、街並みのイメージを形成する可能性も感じられた。町田以外では、宮城県美術館の《佐藤忠良記念館》(1990)や山梨県立美術館の南館(2004)や向かいの文学館(1989)など、前川建築に関係するプロジェクトも興味深い。また津波で被災しつつも、構造的に問題はなかったが、結局は解体された海辺の《マリンパル女川》(1994)も、大宇根事務所の作品である。これは311直後の風景があまりに印象的だったので、筆者の著作『被災地を歩きながら考えたこと』(みすず書房、2011)の表紙に用いた。津波の被害がほとんどなかった松島に近作があり、別の日に改めて《東京エレクトロン松島クラブ》(2021)を見学した。松林の背景を際立たせるように、やや薄い色のレンガを用いるほか、内外に石や木など、本物の材料を効果的に用い、物語性を与えている。また高台に位置していることから、食堂・バーからの景観は良く、宿泊部屋もラグジュアリー感があり、企業の保養/研修施設として理想的な環境だった。



《佐藤忠良記念館》(ハーフミラーに映るのは本館)とアリスの庭




《山梨県立文学館》




右はレンガの外壁が残る《マリンパル女川》(2011年4月1日撮影)




《東京エレクトロン松島クラブ》


2022/10/14(金)(五十嵐太郎)

2022年11月01日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ