artscapeレビュー

「U-35」展、「展覧会 岡本太郎」「みんなのまち 大阪の肖像(2)」

2022年11月01日号

[大阪府]

今年も若手建築家による「U-35」展(「35歳以下の若手建築家による建築の展覧会」)が、大阪駅前のうめきたSHIPホールで開催されたが、ようやくほぼコロナ禍以前に近いオペレーションの状況に戻ってきた。ほとんどの出品者が1/1スケールのインスタレーションを設置し、いつも以上に熱が入った展示空間になっている。各自の切り口は別々だが、シンポジウムでの議論の結果、ゴールドメダル受賞に選ばれた佐々木慧が掲げた、これまでの統合と違う「非建築をめざして」のマニフェストに代表されるように、全体性を揺るがすプロジェクトが目立つ。例えば、キーワードを拾っていくと、金継ぎに着想を得た「繕う」(Aleksandra Kovaleva+佐藤敬)、イメージのズレに注目する「全体像とその断片」(森恵吾+Jie Zhang)、インテリアが変化していく「壊れた偶然」(西倉美祝)、組積造の可能性を拓く「ブリコラージュ」(山田健太朗)、木質化された耐火壁の提案(奥本卓也)、樹種の違いの構造化(甲斐貴大)などである。なお、佐々木は模型の梱包材が、そのまま積み重ねて展示する什器となり、建築モデルを兼ねるものだった。またAleksandra+佐藤によるヴェネツィアビエンナーレのロシア館の改修は、もとがかなり奇妙な空間だっただけに、これまでの変化の痕跡を残しつつ、爽やかな空間に生まれ変わった状態を、おそらく来年に見学するのが楽しみである。



佐々木慧の作品




Aleksandra Kovaleva+佐藤敬の作品




森恵吾+Jie Zhangの作品


U-35展にあわせて、大阪中之島美術館にも足を運んだ。まず「展覧会 岡本太郎」は会期の終わりだったこともあるが、来場者の多さに驚かされた。日本において世代を超えて、親子で楽しめる類稀なアーティストだろう。内容は絵画メインではなく、公共的な作品、写真、著作、グッズ、ロゴのデザイン、CMの出演などを含む、幅広い活動を網羅しており、その方がやはり全身芸術家としての彼らしさが発揮されている。写真撮影OKというのも、作品の私有を嫌った彼にふさわしい。研究としては、新発見されたパリ時代の作品、ならびに岡本が自らの絵画に手を入れて改作している数々の事例が紹介されていたことが興味深い。もうひとつの「みんなのまち 大阪の肖像(2)」展は、コレクションをベースに都市の風景をたどる企画の第2弾である。焼け跡を描いた絵画から始まり、途中からはポスターや懐かしい家電、そしてなんと1/1スケールで再現され、内部の各部屋に入ることができる軽量鉄骨の工業化住宅、2025年の大阪万博を意識した1970年万博の資料なども登場する。同館がデザインの分野にも力を入れていることがよくわかり、頼もしい。



「展覧会 岡本太郎」 パリでの新発見




「展覧会 岡本太郎」 のちに加筆された絵画




「みんなのまち 大阪の肖像(2)」展 軽量鉄骨の工業化住宅




「みんなのまち 大阪の肖像(2)」展 軽量鉄骨の工業化住宅


35歳以下の若手建築家による建築の展覧会(U-35)

会期:2022年9月30日(金)~10月10日(月・祝)
会場:うめきたシップホール(大阪市北区大深町4-1うめきた広場)

展覧会 岡本太郎

会期:2022年7月23日(土)~10月2日(日)
会場:大阪中之島美術館(大阪府大阪市北区中之島4-3-1)

みんなのまち 大阪の肖像(2)

会期:2022年8月6日(土)~10月2日(日)
会場:大阪中之島美術館(大阪府大阪市北区中之島4-3-1)

2022/10/01(土)(五十嵐太郎)

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