2022年12月01日号
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artscapeレビュー

野口里佳 不思議な力

2022年11月15日号

会期:2022/10/07~2023/01/22

東京都写真美術館2階展示室[東京都]

2014年9月~11月に開催された個展「父のアルバム/不思議な力」(ギャラリー916)を見た時、野口里佳の写真の世界が変わりつつあるのではないかと思った。同展には、野口の父が撮影した家族や花の写真を、彼女自身がセレクトしてプリントした「父のアルバム」、身の回り(特に台所)で起きるちょっと不思議な現象を、父の遺品であるオリンパスペンFで撮影した「不思議な力」の2シリーズが出品されていた。それまで、被写体とやや距離を置いた巨視的な世界の作品を主に制作していた野口が、身近な日常を細やかに捉えた写真作品を発表したことがとても印象深かったのだ。

今回の東京都写真美術館の展覧会には、その2シリーズに加えて、初期の「潜る人」(1995)から新作の「ヤシの木」(2022)に至るさまざまなスタイル、手法の作品が出品されていた。《夜の星へ》(2015)、《アオムシ》(2019)、《虫・木の葉・鳥の声》(2020)などの映像作品もあり、壁には野口自身による味わい深いドローイング《やんばるの森》(2022)が描かれている。主な展示作品は、野口が12年間滞在したドイツ・ベルリンから沖縄・那覇に移り住んでから以降のものだが、そこにも制作環境の変化と作風の変化とがシンクロしている様子が伺えた。とはいえ、視点がやや微視的になったとしても、現実世界の様相を原理的に掴み出し、写真というフィルターを通して提示しようとする野口の姿勢に変わりはない。それらに、ほのかなユーモアのセンスを加味することで、チャーミングな作品群として成立させていた。

公式サイト: https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4270.html

2022/10/06(木)(内覧会)(飯沢耕太郎)

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