artscapeレビュー

笹岡啓子「PARK CITY」

2022年11月15日号

会期:2022/10/22~2022/11/11

photographers’ gallery[東京都]

2001年から開始された笹岡啓子の「PARK CITY」の連作は、主にphotographers’ galleryで発表され、2009年にはインスクリプトから同名の写真集として刊行された。その後も制作、発表を継続しているこのシリーズは、すべて同じ撮り方、見せ方ではなく、そのつど微妙にスタイルを変えながら続いてきている。だが今回の展示ほど大きく変貌したことは、これまでなかったのではないだろうか。

特にカラー写真を重ね合わせてプリント(モンタージュ)した6点組は注目に値する。広島市の平和記念公園を中心に撮影した写真を下地にするという点では以前と変わりないのだが、その現在の光景に、1945年の原爆投下以前に撮影された古い写真を重ねている。それらの写真は、広島平和記念資料館で展示されていたものだという。笹岡は2種類の写真をそのままモンタージュするのではなく、カラー写真の色味を決める三原色(YMC)のうちの一色を抜き、その色で古写真をプリントするという操作を施した。そのことによって、過去の風景と現在の眺めとが、滑らかにではなく、捻れや軋みを生じさせつつ接続することになった。空間的な処理のなかに時間的な要素を入れ込むことで、写真の世界が奥行きと広がりをもつようになってきている。

「PARK CITY」の変貌が、これで止まってしまうわけではないだろう。おそらく発表を続けていくうちに、さらなる展開があるはずだ。だが、今回の展示の飛躍を見ると、より多面的に構築された2冊目の『PARK CITY』の刊行を考えてもよい時期に来ているのではないかと思う。

公式サイト:https://pg-web.net/exhibition/keiko-sasaoka-park-city-3/

2022/10/29(土)(飯沢耕太郎)

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