artscapeレビュー

石塚公昭「Don’t Think, Feel!寒山拾得展」

2022年11月15日号

会期:2022/10/13~2022/11/06

コミュニケーションギャラリーふげん社[東京都]

本業は人形作家である石塚公昭の写真作品は、ほかに類例を見ないユニークなものだ。彼はまず、実在の作家、ミュージシャンなどだけでなく、物語の登場人物など架空の存在も含めて、彼らをモデルとした精緻かつリアルな人形を作成する。それらを撮影し、背景や小道具などの画像と併せて画面に自在に配置し、あたかも活人画の舞台のような場面を作り上げていくのだ。今回は寒山拾得、蝦蟇仙人、鉄拐仙人、達磨大師、一休宗純など、中国や日本の神話、伝説、説話などに登場する人物たちにスポットを当て、なんとも奇妙なイメージの世界を織りあげている。

これらの仕事は、もはや写真作品の範疇を超えている。とはいえ、その画像形成のシステムを、写真的なプロセスに委ねていることも間違いない。写真と絵画のはざまの表現というよりは、石塚の脳内に花開いたイメージ世界を忠実にプリントアウトした作品としか言いようがないだろう。前回のふげん社での個展「椿説 男の死」(2020)では、三島由紀夫という特定の個人に収束する作品が展示されていた。今回は幅広い題材を扱っているため、やや印象が拡散してしまったことは否定できない。だが逆にその分、石塚の脳内世界がより活性化し、自由奔放に伸び広がりつつあるともいえるだろう。

技術的にはまだ完成途上のものもあり、主題についてもいろいろなアイディアが蠢いてきているようだ。さらなる展開が期待できるのではないだろうか。

公式サイト:https://fugensha.jp/events/221013ishizuka/

2022/10/26(水)(飯沢耕太郎)

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