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特別展「Life with Bonsai〜はじめよう、盆栽のある暮らし」

2022年11月15日号

会期:2022/10/14~2022/11/09

さいたま市大宮盆栽美術館[埼玉県]

昨年春、美術家2人を招聘した企画展が記憶に新しいさいたま市大宮盆栽美術館で、特別展「Life with Bonsai」が開催された。今度は美術家をはじめ建築家、写真家、ファッションデザイナー、編集者ら多彩な9人のクリエイターを招き、それぞれが独自の盆栽飾りを発表した。盆栽飾りは、盆栽、掛軸、添物(水石や小さな盆栽)を設える三点飾りが基本。このいわば“型”をいかに押さえつつ崩すかが、センスの見せどころとなる。その点で本展はかなりバラエティーに富んだ内容であった。

まず印象に残ったのは、写真家、大和田良の展示である。構成要素が三点に絞られている点で、三点飾りの基本に則ってはいるのだが、主となるのは盆栽ではなく水石で、添物として小さな盆栽が脇の付書院に飾られているのみだった。なぜこうした構成なのかと言えば、京都の加茂川流域で採れる「水溜り石」を撮った自身の写真作品が掛軸として掛けられていたからだ。その掛軸と対比させるように「加茂川石」を水石にし、それをあえて主に選んだようである。被写体を二次元から三次元へと広げるがごとく、写真と本物とを同等に並べて見せるところが、実に写真家らしい発想に思えた。


大和田良《加茂川石》(2022)
ラムダプリント 加茂川石(大宮盆栽美術館) 黒松(藤樹園)


ほかにファッションデザイナーの津森千里や、建築家・プロダクトデザイナーの板坂諭の展示もユニークだったが、やはり注目したいのは昨年春にも参加した須田悦弘、ミヤケマイの美術家2人である。須田の展示は、一見、山もみじの盆栽が卓の上に設えられているだけに見える。キャプションを見ると、作品名も「もみじ」とあり、いったいどれが彼の作品? と戸惑うのだが、配布資料に親切にも説明が書かれていたことで理解できた。なんと、床に一葉落ちていた“落ち葉”が彼の彫刻作品だったのだ。あえて偽物を本物に紛れさせた挑戦的な展示である。一方でミヤケの展示は、床の間飾りに精通した彼女らしい完成度を見せていた。テーマは「虫養い」で、これは小腹が空いた時に食べる「お腹の虫に与えるおやつ」という意味だそう。また本展開催時の10月は、茶の湯では新茶の茶壺を開く直前の「名残の月」と呼ばれることに合わせ、遊び心にあふれた自身の掛軸作品などを取り合わせていた。結局、盆栽をどう解釈するのかは自由でいい。そんなメッセージを本展から受け取った。


須田悦弘《もみじ》(2022)
木に彩色 山もみじ(大宮盆栽美術館)


ミヤケマイ《虫養い Peckish》(2017/個人蔵)
ミクストメディア・軸 チャノキ、瀬田川石、舟(以上、大宮盆栽美術館)



公式サイト:https://www.bonsai-art-museum.jp/ja/exhibition/exhibition-8285/


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