2022年12月01日号
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artscapeレビュー

写真新世紀 30年の軌跡展 写真ができること、写真でできたこと

2022年11月15日号

会期:2022/10/16~2022/11/13

東京都写真美術館地下展示室[東京都]

立ち上げの1991年から2009年までレギュラー審査員を務めたので、筆者にとって「写真新世紀」(キヤノン主催)は愛着のある公募展だ。残念なことに、2021年に30年にわたる歴史を閉じたのだが、木村伊兵衛写真賞などの受賞者を多数輩出したことも含めて、意義深い企画だったと思う。本展は、その軌跡を振り返り、歴代のグランプリ、優秀賞受賞者から10名の作品をピックアップして展示した作品展である。

出品者は青山裕企(2007年度優秀賞)、新垣尚香(2005年度優秀賞)、大森克巳(1994年度優秀賞)、奥山由之(2011年度優秀賞)、澤田知子(2000年度優秀賞)、高島空太(2016年度優秀賞)、中村ハルコ(2000年度グランプリ)、蜷川実花(1996年度優秀賞)、長谷波ロビン(2012年度優秀賞)、浜中悠樹(2012年度優秀賞)である。展示作品を見ると、「写真新世紀」がそれぞれの時代の写真表現の動向をとてもよく反映していたことがわかるし、大森克巳、澤田知子など、受賞作がそのまま展示されていて、そのやや劣化したプリントのたたずまいを見ているだけで感慨深かった。

だが、特に2010年代以降の受賞者のなかに、なぜ選ばれたのかよくわからない作家が含まれていることには違和感を覚えた。どうやら、一般投票で出品者を選ぶという選考プロセスをとったことで、いわゆる組織票が動いた結果のようだ。せっかくの30周年記念展が偏ったものになったことは残念だった。また、2021年度のグランプリ受賞者、賀来庭辰の新作「夜」も同会場で展示されていたのだが、純粋な映像作品である同作と、これまでの「写真新世紀の」歩みとが、どうしてもうまく接続しない。別な見方をすれば、賀来のような作家がグランプリに選ばれたこと自体が、「写真新世紀」をこれ以上継続するのが難しくなってきた時代のあり方を指し示しているともいえそうだ。

なお同時期に、本展の一環として、東京・品川のキヤノンギャラリーSでは、歴代のグランプリ、準グランプリ受賞者の作品を一堂に会した展覧会(2022年10月13日~11月22日)も開催されている。

公式サイト: https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4309.html

2022/10/16(日)(飯沢耕太郎)

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