artscapeレビュー
カタログ&ブックス | 2023年8月1日号[近刊編]
2023年08月01日号
展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
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ニジンスキー 踊る神と呼ばれた男
〈本書が対象とするのは、見者としてのニジンスキーではなく、ダンサーかつコレオグラファー(振付家)としてのニジンスキーである。 20世紀にはヌレエフ、バリシニコフ、熊川哲也といったスーパースターたちが、バレリーナたちに劣らず、いやバレリーナたちよりも観客を魅了してきた。そうした男性スーパースターたちの系譜の先頭に位置しているのがニジンスキーである。ニジンスキーから男性ダンサーの時代が始まったのである。 その類い稀な跳躍力によって一世を風靡したにもかかわらず、最初の振付作品には小さな跳躍が一つあるだけだ。それだけでなく、その作品『牧神の午後』はバレエの二大原理、すなわち開放性と上昇志向性を否定した。そのニジンスキーの勇気ある一歩から、現代バレエが生まれたのである。〉 さまざまな創作の源泉ともなっている伝説の舞踊家ニジンスキー。その生涯を、豊富なバレエ鑑賞経験に基づき、貴重な資料と写真を駆使して再構成した、バレエ史研究の第一人者による待望のライフワーク。
藤田嗣治 安東コレクションより 猫の本
世界で初めて「藤田嗣治の作品だけを展示する個人美術館」として開館された軽井沢安東美術館。世界屈指のコレクションの中で、蒐集の原点となったのは猫の絵です。愛すべき猫たちのふとした仕草を、巧みにそして緻密に描き出した藤田嗣治。毛並みの一本一本まで繊細に線をひいた藤田の猫たちに出会えば、目も心も幸せに。新収蔵作品まであますところなく収載した本書で至福のひと時を。猫好き、アート好きのみなさま、必見です。
百の太陽/百の鏡 写真と記憶の汀
最古の実用写真術、銀板写真(ダゲレオタイプ)とともに旅に出る。福島の渚へ、遠野の田園へ、核実験場の砂漠へ、あるいは己の過去、夢と現の境へ――。詩人になりたかった美術家は、絶望と混迷の時代にあってもまた昇る陽を待ちながら、ひとり言葉とイメージを探す。世界と自身を見つめ、未来の先触れに手を伸ばす、文+写真エッセイ。
私たちは何者?ボーダレス・ドールズ
2023年7月1日~8月27日まで、渋谷区立松濤美術館で開催中の展覧会の図録。
愛でたり、憎んだり、宿ったり、働かせたり……呪い人形、雛人形、生人形、マネキン、リカちゃん、村上隆のフィギュアまで、厳選約90点を掲載!「日本人」と「人形(ヒトガタ)」の深くて長い複雑な関わりの1000年の歴史を検証
クリストファー・ノーラン 時間と映像の奇術師
フィルム・ノワールの時間を切り刻み、 スーパーヒーロー映画にリアリズムをもち込み、 スパイ・アクションとSFを融合させる…… 長編デビュー作『フォロウィング』から最新作『Oppenheimer』まで、 芸術性と商業性を兼ね揃えた特異点クリストファー・ノーランの歩み。
基礎から学べる現代アート
現代アートの始まりは、デュシャンの『泉』といわれています。なぜ既製品の便器をひっくり返したものがアートなのか? 本書を読めば、現代アートが誕生した背景から現代までの歴史的な流れが手に取るようにわかります。現代アートに初めて興味をもった中高生から、現代アートを基礎から学びたいと思っている全ての人への、とっておきの入門書。
つくる人になるために 若き建築家と思想家の往復書簡
建築する日々に励みながら、旅先でのスケッチや執筆活動にも精をだす若き建築家と、奈良の山村に私設図書館をつくり、執筆や自主ラジオなど様々な形でメッセージを発信する若き思想家が、些細な日常の出来事や思索をつぶさにみつめて綴った往復書簡。 私たちにとって「つくる」とはなにかを問いかけ、つくる喜びについて対話を重ねながら、生き物として生きやすい社会を模索していく。
2023/07/28(金)(artscape編集部)