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スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた

2023年08月01日号

会期:2023/07/07~2023/09/12

国立西洋美術館[東京都]

ヨーロッパのなかでもピレネー山脈に隔てられたスペインは、アフリカに隣接し、かつてイスラム圏に属したこともあるせいか文化的にちょっと異質なイメージがある。一般的にスペインといえば、フラメンコ、闘牛、アルハンブラ宮殿、現代ではサッカーが有名か。文学ではセルバンテスの『ドン・キホーテ』しか思いつかないが、美術だとベラスケス、ゴヤ、ピカソと1、2世紀にひとりくらい天才画家を輩出した国として知られる。そんなスペインのイメージを広く伝えてきたのが版画であり、今回は同館所蔵の版画を中心に、スペインという国のイメージの変遷をたどろうという企画だ。

最初は17世紀初頭に著された『ドン・キホーテ』の挿絵や版画が並ぶ。物語のおもしろさだけでなく、馬にまたがる貧相なドン・キホーテとロバに乗る太っちょのサンチョ・パンサのヴィジュアルは、それだけで「絵になる」せいか、ホガース、ゴヤ、ドーミエ、ダリなどが描いていきた。セルバンテスより少し後の17世紀を代表する画家といえばベラスケスだが、彼の作品は大半がスペイン国内にあったため、19世紀にプラド美術館が開館するまであまり知られていなかった。ゴヤやマネがこの巨匠の絵を版画にしたが、とりわけマネによるベラスケスの模写や援用が近代絵画の革新を生み出すことになる。

展示はその後、アルハンブラ、フラメンコ、闘牛と続くが、正直だんだん飽きてくる。だって「版画を通じて」なんだもん。スペインの特異なイメージを伝えるというコンセプトは悪くないし、ちょうど「ガウディとサグラダ・ファミリア展」も開かれていてタイミングもグッドなんだけど、そもそもの出発点がコレクションの版画を見せようということだから限界がある。蛇足だが、常設展示室の奥では小企画展「美術館の悪ものたち」をやっていて、こちらも版画中心だが、テーマを膨らませればもっとおもしろくできそう。ぜひ規模を拡大して企画展示室で見せてほしい。


公式サイト:https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2023spain.html

美術館の悪ものたち

会期:2023年6月27日(火)~9月3日(日)
会場:国立西洋美術館 新館2階 版画素描展示室
(東京都台東区上野公園7番7号)

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