artscapeレビュー
イスタンブール空港と日帰りツアー
2024年01月15日号
イスタンブール空港[トルコ、イスタンブール]
今回のブダペスト行きでは、乗り継ぎでイスタンブールの空港を利用したが、トルコの滞在は30年ぶりくらいである。アタテュルク空港に代わり、2019年にオープンした新しいイスタンブール空港は、ピニンファリーナ、ノルディック、グリムショーなど西欧の建築事務所が設計を担当、中近東やシンガポールのように華やかなショッピングモールを抱えた超巨大な空間に変貌し、以前とまったく違う。この流れに日本は完全に乗り遅れており、成田も羽田も首都の国際空港に見えない。
興味深いのは、ただ商業施設が並ぶのではなく、有料のエアポート・ミュージアムを併設しており、古代やイスラムなど、トルコ各地の文化財を紹介していたこと。それぞれの空港からの距離も示すことで、次回はイスタンブール以外の地方に行きたいと思わせる仕かけになっていたこと。それなりに規模は大きいが、各部屋に監視員はまったくいなかったので、おそらくレプリカの展示だったと思われる。
帰りのトランジットでは、トルコ航空を利用している場合、乗り継ぎ時間が長いと(6~24時間)、無料の「Touristanbul」(日帰りイスタンブール観光ツアー)に参加できるというので申し込んだ。1日に8回のツアーが組まれており、もっとも長いのは8時30分から18時までの終日であり、18時30分からだとボスポラス海峡クルーズが含まれるという。筆者が参加したのは、16時から21時30分までのイブニングツアーであり、空港からバスで往復し、旧市街を散策した後、人気店「セリム・ウスタ」の夕食を楽しんだ。
まわったのは、シェフザーデ・ジャーミィ、イスタンブール大学、ベヤズット広場、グランドバザール、コンスタンティヌスの柱、エジプトのオベリスク、蛇の柱、ドイツの泉、ブルーモスクなどである。そして前に訪れたときは博物館だったが、今回はモスクになっていたアヤソフィアは、じっくりと内部を見ることができ、ローマ建築の迫力を体験した。ツアーでは、強制的に土産物屋に連れていかれることもなく、お金が必要な場面がない。これは凄いサービスで、ただの経由地と考えていた旅行客もイスタンブールのファンになり、次はここを目的地にしようと考えるだろう。クールジャパンの予算も、お笑いにつぎこまないで、こう使うほうが効果的ではないか。
2024/01/01(月)(五十嵐太郎)