artscapeレビュー

酒航太「山林的」

2024年01月15日号

会期:2023/12/02~2023/12/29

スタジオ35分[東京都]

酒航太は東京・新井薬師でギャラリー、スタジオ35分を運営しながら独自の活動を続けている写真家である。2021年には、動物園の動物たちと向き合って撮影した写真集『ZOO ANIMALS』(bookshop M)を刊行した。今回展示しているのは、2022年から始まったという新たな写真シリーズで、「誰もいないような山林に身を置いて」撮影したというモノクロームの作品が並んでいた。

酒は動物園を撮影しているうちに、「自分自身の動物感覚を意識する」ようになったのだという。人間的な尺度を外して、動物のように全身感覚で世界を見つめ直す──そんな彼の思いが、やや不分明な、くぐもった空気感を強調したプリントにあらわれていた。だが、道や樹木やガードレールなどが遠近感を伴ってしっかり写っている写真もあり、「動物感覚」をどこまで徹底しているのかという点についてはやや疑問が残る。もっと無意識レベルでシャッターを切っていくようなやり方が必要になってくるのではないだろうか。今回の展示はまだ試行錯誤の段階だったが、とてもいいテーマなので、さらなる展開を期待したい。

なお、同時期に中野駅ガード下ギャラリー「夢通り」では、大判プリントでの動物たちのクローズアップ写真による「見ると見られる」シリーズを(12月3日~12月28日)、東京都美術館ギャラリーBでは、「動物園にて──東京都コレクションを中心に」展の一環として、「ZOO ANIMALS」シリーズを(2023年11月16日~2024年1月8日)展示していた。


酒航太「山林的」:https://35fn.com/exhibition/sake-kota-exhibition/

2023/12/13(水)(飯沢耕太郎)

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