artscapeレビュー

うつゆみこ「あたま きまま らっきー」

2024年01月15日号

会期:2023/12/07~2023/12/24

OGU MAG[東京都]

作品、190点を収録した14年ぶりの写真集『Wunderkammer』(ふげん社)を刊行し、東京都写真美術館で開催された「日本の新進作家 Vol.20 見る前に跳べ」にも出品するなど、うつゆみこの意欲的な活動には拍車がかかってきている。東京荒川区のギャラリー、OGU MAGで開催した個展でも、1000点余りの作品を、スペースを目一杯使って全面展開していた。

今回の展示では、モノと生きものとがコラージュ的にひしめき合う彼女のこれまでの作品とは、かなり違う方向性が目指されている。生まれ育った荒川区の街々を歩き回って撮影したスナップ写真では、日常の場面に向けられた眼差しが検証される。被写体を発見し、つかみとるように捕獲していくあり方は、これまでの作品とも共通しているが、よりノンシャランにさまざまな方向にアンテナを伸ばしている様子が伝わってくる。亡くなった父親がよく通っていたという店の前に、うつ自身が立って撮影するという試みも面白い。

二人の娘さんとの共作も展示していた。特に11歳のお姉さんは好奇心旺盛で創作意欲も強く、うつの顔に大胆なペインティングを施して、連続場面のポートレートを撮影している。娘さんたちが撮影した、家の中での普段の表情を撮影したスナップ写真にも勢いがある。うつ自身の作品にも言えることだが、予想の範囲におさまりそうな場面を、うまくコントロールを外して、ありそうであまりない状況に仕立てていた。この共作にはさらなる可能性がありそうだ。


うつゆみこ「あたま きまま らっきー」:https://ogumag.wixsite.com/schedule/single-post/utsuyumiko

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