2024年02月15日号
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artscapeレビュー

ブダペストの市民公園

2024年01月15日号

市民公園[ハンガリー、ブダペスト]

ブダペストの壮麗なアンドラーシ通りの突きあたりが、いずれも19世紀末に整備された英雄広場とそれを囲む巨大な市民公園である。前者はハンガリー建国1000年を記念するモニュメント群を配し、後者はさまざまな文化施設が点在する。例えば、広場を挟んで向きあう古典主義の国立西洋美術館と現代美術館、背後には過去の建築様式を折衷したヴァイダフニャア城(一部は農業博物館)、温泉、国立大サーカスなどだ。



ブダペスト国立西洋美術館



ヴァイダフニャド城



英雄広場


20世紀初頭の動物園では、さまざまな建築家が参加し、象、熊、猿の彫刻があるゲート、モスク風の象舎、教会を参照した鳥小屋、各地の民俗建築をモチーフにした飼育小屋が目を楽しませる。



ブダペスト動物園 旧象舎


現在、リジェ・ブダペスト・プロジェクトによって注目すべき現代建築群が登場している。藤本壮介による《ハンガリー音楽の家》(2022)は、無数の穴があいた丸い屋根を細い柱群で支え、建築というよりも有機物のような存在感によって公園の風景に溶け込む。常設展示は、予約がいっぱいで見られず、地下のサウンド・ドームも体験できなかったが、冷戦下のハンガリーのポピュラー音楽史を扱う企画展は、力の入った展示デザインで興味深い。当時、歌詞はもちろん、レコードのジャケットも検閲されていた。最近、台湾にも流行音楽の展示館が登場しているが、日本でもこうした施設が欲しい。



藤本壮介《ハンガリー音楽の家》



ハンガリー音楽の家での企画展 展示風景


そのすぐ近くに登場したのが、ナプール・アーキテクトによるダイナミックな造形の《民族学博物館》(2022)である。大地をめくり上げたように、両端に向かって傾斜する芝生の屋上は登ることができる。外壁のグリッドは無数のピクセルが覆う。館内は、細い階段とスロープ、そしてコレクションの一部を無料で見せる通路などが続く。民族学博物館のエントランスでは、公園と都市の大きな模型を展示し、将来、このエリアにSANAAの新国立ギャラリーも建設されることを示していた。すなわち、21世紀における市民公園の大改造が進んでいるが、国際コンペによって選ばれた2組の日本人建築家が関わっている。



ナプール・アーキテクト《民族学博物館》




民族学博物館で紹介されていたSANAAプロジェクト


なお、独創的なデザインで知られるレヒネル・エデンは、公園を囲む通りに2件の住宅、さらに東側に国立地質学研究所を手がけている。



国立地質学研究所


2023/12/30(土)(五十嵐太郎)

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