artscapeレビュー
フクシマサトミ 襖絵展
2013年11月01日号
会期:2013/10/05~2013/10/13
陶々舎[京都府]
大徳寺にほど近い瀟洒な木造邸宅を、ほぼそのまま利用した会場で行なわれた本展。室内を取り囲むように展示された作品は、筆を一切使わず、紙に染料をかけ流した痕跡と滲みだけでつくられていた。それらは5から6の色層で構成されており、ひとつの層が乾くのを待って次に移るという、手間のかかる制作方法が取られている。画風は抽象的だが、床の間だけは山水画を思わせる仕上がり。これは作者が最初から意図したものではなく、偶然風景らしい図像が見えてきたので、途中から山水画に寄せたそうだ。周囲を埋め尽くしているのに圧迫感はなく、逆に広がりのある空間が眼前に広がるかのような、伸びやかさが魅力的な作品だった。
2013/10/11(金)(小吹隆文)