2020年04月01日号
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artscapeレビュー

木村恒久「キムラ・グラフィック《ルビ》展」

2010年05月15日号

会期:2010/03/29~2010/04/10

ヴァニラ画廊[東京都]

普段はフェティッシュ/エロティシズム系の写真やイラストを中心に展示している東京・銀座6丁目のヴァニラ画廊で、やや珍しい展覧会が開催された。木村恒久は1960~64年に日本デザインセンターに所属するなど、戦後の日本のグラフィック・デザインの高揚期を担ったひとりだが、同時に「国家」「戦争」「イデオロギー」「都市」などをテーマにした、近代文明を痛烈に批判するフォト・コラージュ作品でも知られていた。今回の「キムラ・グラフィック《ルビ》展」では、まさに1930年代のジョン・ハートフィールドらの政治的、批評的なコラージュの流れを汲む、70~80年代の切り貼りによるフォト・コラージュ作品に加えて、60年代のクールでポップなグラフィック、ポスターなども展示されており、2008年に亡くなったこの過激なデザイナーの全体像が浮かび上がってくるように構成されていた。
だが、木村の真骨頂といえるのは、理知的な文明批判というだけではなく、どこか土俗的、魔術的な「情念」の世界にもきちんと目配りしていたことではないだろうか。1984年の舞踏集団「白虎社」のポスターの、どろどろとした百鬼夜行的なイメージの乱舞から見えてくるのは、彼が地の底から湧き上がってくるような土着の神々(俗神)のエネルギーの噴出に、大きな共感を寄せていたということだ。木村のユニークな仕事は、日本の写真・デザインの沈滞ムードを吹き払うひとつの手がかりになっていくかもしれない。

2010/04/09(金)(飯沢耕太郎)

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