artscapeレビュー

2010年02月01日号のレビュー/プレビュー

公募京都芸術センター2010

会期:2010/02/05~2010/02/24

京都芸術センター ギャラリー北・南[京都府]

毎年ひとりの審査員を立て、ギャラリー(2室)の展示プランを公募する本展。今回は映画監督の河瀬直美が審査員を担当。126件の応募の中から、寺島みどりと森川穣のプランが選出された。寺島は会期中継続して壁画の公開制作を行ない、自身が触れた世界や記憶の断片をライブ感覚で描き出す。森川はギャラリーの床下の土を移設して「確かなこと」を問いかけるインスタレーションとする予定。毎回力の入ったプランが実現され、若手の登竜門的なポジションとなっている展覧会だけに、今年の2人も要注目である。

2010/01/20(水)(小吹隆文)

京都オープンスタジオ2010

会期:2010/02/12~2010/02/14

AAS/うんとこスタジオ/桂スタジオ/兼文堂スタジオ/豆ハウス/ライトスタジオ/凸倉庫/GURA[京都府]

※会期は各スタジオによって異なる

京都市内で共同スタジオを営む京都市立芸大のOBを中心とした面々が、同大学の卒業制作展に合わせてオープンスタジオを実施。昨年の同時期には4つのアトリエが同様のイベントを行なったが、今年は数もエリアも昨年より大幅にスケールアップ。その分美術ファンからの注目も大きくなりそうだ。こうしたオープンスタジオが何故盛り上がりを見せているのか。その根底には、一時期のアートバブル的状況や、関西でもコマーシャルギャラリーが増加したことなどによる価値観の変化があると思われる。だとすれば、この傾向は他大学出身者をも巻き込んで今後も続くかも。2010年代の関西アートシーンの震源地になる可能性さえ秘めていると言えよう。

2010/01/20(水)(小吹隆文)

シュウゾウ・アヅチ・ガリバー EX-sign(エクス・サイン)

会期:2010/02/27~2010/04/11

滋賀県立近代美術館[滋賀県]

1960年代後半に行なった数々のハプニングや、1973年に発表した死後に自分の肉体を80分割して特定の人物に保管してもらう作品《Body Contract(肉体契約)》などで知られるシュウゾウ・アヅチ・ガリバー。1990年代以降は活動拠点をヨーロッパに移したため、今やその存在は謎めいたものになってしまった。本展は彼の全貌を国内で初めて紹介する展覧会。ドローイング、インスタレーション、パフォーマンスなど多岐にわたるその活動を、初期から最新作までの約120点で明らかにする。

2010/01/20(水)(小吹隆文)

柴田純生 展

会期:2010/01/12~2010/02/07

ギャラリーなかむら[京都府]

アクリル樹脂を素材にした立体で知られる柴田純生だが、今回の新作はまったくの別系統。緩やかに湾曲させたアルミ板にパール系の特殊な塗料を吹き付けた平面(半立体?)が発表された。作品は、見る角度や光の当たり方次第で色彩がどんどん変化するのが特徴。例えば真正面から見た時は金色の作品は、近づくに従って紫色へと見た目を変える。それはひとえにパール系の塗料の仕業だが、作家が不在だったのでその秘密を聞き出すことはできなかった。シンプルな形態で一見ミニマルアート風だが、実は雅やかな芳香をふりまく作品を前に、ベテランアーティストの実力を再認識した。

2010/01/21(木)(小吹隆文)

聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝

会期:2010/01/23~2010/03/31

大阪歴史博物館[大阪府]

チベット仏教の仏像、仏具、経典を中心に、ポタラ宮を飾った調度、楽器、さらには伝統医学の資料まで、123件が紹介された(うち36件は日本の国宝に当たる国家一級文物)。筆者はチベット仏教の知識を持たないが、そのエキゾチックな造形にはたちまち魅了された。特に仏像のポーズは妖艶で、ヒンドゥー教の流れを汲む見知らぬ仏様や、男神と女神が重なり合った交合仏など、インパクトの強いものばかりだ。全体的に質が高く、非常に楽しめる展覧会だった。ただ一点、記者発表時に不可解な出来事があった。民族衣装をまとったチベット人男女の学芸員と、スーツ姿の中国人学芸員が出席していたのだが、何故か彼らが一言も発しないのだ。ひょっとしたら中国人学芸員はお目付け役で、チベット人学芸員を威圧していたのだろうのか。これはあくまで筆者の邪推に過ぎないが、そう思わせるぐらい彼らの無言は不自然だった。

2010/01/22(金)(小吹隆文)

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