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artscapeレビュー

テマヒマ展〈東北の食と住〉

2012年07月01日号

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会期:2012/04/27~2012/08/26

21_21 DESIGN SIGHT[東京都]

東北地方には現在でも手間と暇をかけたものづくり、手仕事の伝統が残っている。本展はそのなかでも特に食と住に焦点を当てて、東北のものづくりの本質を探ろうという企画である。展示前半では、きりたんぽや油麩、笹巻などの伝統的な食品づくりと、会津木綿やマタタビ細工、りんご剪定鋏、りんご箱などのものづくりが映像で紹介される。展示後半では、写真と実物で東北の食と住にかかわる「もの」と、ものづくりのための「道具」とが展示されている。
 都会よりもずっとゆっくりとした時間が流れているとはいえ、あらゆる場所に確実に変化は訪れる。伝統的なものづくりもそのままではない。映像作品に取り上げられたものづくりの現場でも、古くからの道具ばかりではなく、プラスチック製品も用いられている。手作業ばかりではなく、食品には電動の練り機が、繊維業には自動織機が導入されている。そもそも東北地方でリンゴが栽培されるようになったのは明治以降で、りんご剪定鋏、りんご箱づくりもリンゴ栽培に附随して現われた「新しい」産業なのである。そうはいっても、これらのものづくりは都会の消費文化を支えている産業とは明らかに異なっている。それでは、このようなものづくりの本質、失われつつある伝統はどのようなものなのか。企画者のひとり佐藤卓は、伝統的なものづくりのキーワードとして身体を挙げている。道具と素材に手で触れる。人間の身体と道具とが一体となって素材にぶつかり、ものを形づくってゆく。「『便利』とは、身体を使わないということ」なのだ。もうひとりの企画者、深澤直人が指摘するのは生活に刻まれたリズムである。「手間ひまをかけるものづくりは常に『準備』である。その営みに終わりはないし完成もない」。採る、つくる、使う、食べる。そうした人間の行為が途切れることなく循環している。東北の自然と人間の身体とがつくりだすリズムが、そこに住む人々の生活とものづくりの姿を規定している。りんご剪定鋏、りんご箱づくりでいえば、それはリンゴ栽培とともに100年余をかけて形成されてきたサイクルの一部なのである。
 こうした展覧会のコンセプトは、トム・ヴィンセントと山中有によるショートフィルム、西部裕介による写真には明確に反映されている。しかし、実物展示はどうだろう。透明なガラスの展示台に均等に並べられた麩、凍み餅、駄菓子類。真空パックされた食品。いずれも整然としていて、とても美しい。しかし、すべてのものがフラットに、等価な状態にある。匂いも手触りも取り除かれ、意味や価値は解体され、かたち、大きさ、色彩に純化された姿は、古い博物館の標本展示を想起させる。デザインの展覧会と考えればこれもひとつの方法であると思うが、「テマヒマ」という文脈からすると違和感を禁じえない。[新川徳彦]

2012/06/22(金)(SYNK)

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