2017年12月15日号
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artscapeレビュー

美術ペニス

2013年08月01日号

会期:2013/06/14~2013/06/23

KUNST ARZT[京都府]

文字通り「ペニス」をモチーフにした作品を集めた展覧会。企画者で画廊主の岡本光博をはじめ、水内義人、春名祐麻、マリアーネ、天憑、高須健市が参加した。自主規制しがちな主題を、それぞれ正面から表現した潔い作品ばかりで、じつに面白い。
なかでも注目したのは、春名祐麻と天憑。某有名芸能人のペニスを想像しながら制作するワークショップ「まさはるのチンコを作ろう☆」で知られる春名は、ピカソの《花束》をもとにした新作を発表した。色とりどりの花束を握る2人の手に、動作を表わす二重の線を2つ描き加えただけのシンプルな作品だ。すると、どうだろう。まるでペニスをしごいているようにしか見えないから不思議だ。愛情の象徴である花束を性欲の象徴に意味的にずらすこと。最低限の行為によって最大限の効果を発揮する、非常に優れた傑作である。
パフォーマンスアート集団の天憑は、巨大なペニスの模造をかつぎながら鴨川の上流を目指す《奉納祭》を発表した。その記録映像を見ると、ふんどし姿の男たちが赤い男根を抱え上げて川の中を歩き、時折土手や橋から見下ろす人びとに向かって男根を元気よく突き上げている。三条から歩き始め、ゴールは出町柳。川が二股に分かれているところを股間に見立てたようだ。その中洲に上陸すると、紙で形成した女陰に向かって男根を突き刺し、そのまま突き抜けて、パフォーマンスは終わった。最後のあまりにも直接的な表現は説明過剰であるように思わなくもないが、それでも男根信仰を主題にしたパフォーマンスとしては秀逸だったように思う。近年明らかに増加しつつある民俗学的な主題に取り組む現代アートのなかでも、天憑のパフォーマンスは観客を巻き込む力が飛び抜けていたからだ。現代アートやパフォーマンスというより、まるで伝統的な祭りのような祝祭的な雰囲気を醸し出していた。けれども翻って考えてみると、伝統的な祭りといえども、そもそもの発端はこのような突発的で衝動的なパフォーマンスだったのではないだろうか。天憑は現代アートと伝統行事が交わる原点を突いたのだ。

2013/06/23(日)(福住廉)

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