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ポコラート全国公募展vol.3 アール・ブリュット? アウトサイダー・アート? ポコラート!福祉×表現×美術×魂

2013年02月01日号

会期:2012/12/14~2013/01/20

3331 Arts Chiyoda[東京都]

「ポコラート」とは、Place of “Core+Relation” Art を意味する造語で、障がいのある人と障がいのない人、そしてアーティストが出会う場として考えられている。3回目となる本展では、1,300点あまりの応募作のなかから厳選された214点の作品を展示した。
会場を一巡してみて感じるのは、空間に満ち溢れたエネルギーの凄まじさ。すべての作品と向き合うと体力を消耗するほど、一つひとつの作品からは得体の知れない何かが放たれている。それは外向的な存在感というより、むしろ内向的な磁力と言うべきもので、それらが錯綜することで磁場が乱れていたように見えた。
刺繍の作品が数多く出品されていたが、その内実はじつに千差万別だ。緻密なステッチによって図像を描くものがあれば、ストロークがやたらに大きい大作もある。いわゆる「刺繍作品」として括ることが難しいほど、さまざまなベクトルが入り乱れていたのである。
なかでもひときわ目を引きつけられたのが、金崎将司の《百万年》。灰色の物体が転がっているが、よく見ると断面には幾重にも層が折り重なっている。随所に文字らしき痕跡が見えるから、きっと雑誌や広告などを堆積させたのだろう。聞くと、それらから切り取った図像を水糊で貼り合わせていき、時折サンドペーパーで表面を削り取るのだという。その単純明快な手作業を反復することで、ぺらぺらの紙片を立体にまで仕上げた迫力! この他に類例を見ない造形の力があってこそ、障がいのある人とない人、そしてアーティストを出会わせることができるのだろう。
「ポコラート」は生まれてまだ日が浅い。それを流行のキーワードとして消費させないためには、たえず新しい出会いに挑んでいくほかない。そのためにはまず、私たちが内面化してしまっている「美術」のフレームをあえて外す意欲が必要である。「はだかの眼」がなければ、新たな出会いは期待できないからだ。その難しさを楽しむ知恵を磨きたい。

2012/12/28(金)(福住廉)

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