2021年09月15日号
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artscapeレビュー

「であ、しゅとぅるむ」展(文谷有佳里のドローイング作品ほか)

2013年02月01日号

会期:2013/01/09~2013/01/20

名古屋市民ギャラリー矢田[愛知県]

美術批評の研究者で同人誌『Review House』の編集も担当した筒井宏樹企画による展覧会は、作家たちにチームを組ませたり制作のプロセスを開示するという縛りだったりを設定することで、展示会場をタイトル通りの「嵐」状態にしていた。作家たちのみならず観客にも開放されたお絵かきスペース(落書きOKの白い紙が通路の両側を覆う)を潜ると、見る者の視界には、つねに複数の作家による作品が重層的に断片的に飛びこんでくる混沌とした情景が広がった。ポスト・カオス*ラウンジのひとつの試みとして読みとりたくなるその景色は、しかし、カオス*ラウンジがpixiv的な環境から生まれていたのとは異なり、現代美術的な環境の反映であることは明瞭であり、その分、作家の技量の強さが際立っていた。それもそのはず、伊藤存、小林耕平、泉太郎、坂本夏子、梅津庸一、大野智史など作家の顔ぶれが強力なのだ。高級食材をふんだんに用いたミンチは、味わうと、それぞれの画力の競演といった様相を呈し、その分、瞬間のインパクトや情報としての強度に作家の力が還元されてしまう気がして「嵐」を生む展示の面白さと難しさを同時に感じた。そんななか、端っこで他の作家と競合することなく、ひっそりと、自力を存分に見せていたのが文谷有佳里のドローイング作品だった。小気味のいいスキャットに踊らされてしまうように、文谷の線は目的なくしかしリズミカルで、延々と続く軽快かつスリリングな運動に目は完全に心を奪われ、その流れに釘付けになってしまった。会場の一角で本人が実際に実演していたのだが、本人の意識とはまるで関係ないかのごとく自由闊達に手が動く様子は、さながら夢遊病者のよう。線の運動にグラフィティとの近さを感じる。いや、なにかになぞらえるなら、これは紙上のダンスだ。身体表現のダンスと異なり、花火みたいに瞬時に消えてしまうことなく、紙の上ならば運動の情報は堆積しているのだし、あるいは濱野智史のインターネット情報論(『アーキテクチャの生態系』)に重ねてみるならば擬似的に同期しているわけである。そうした利点を有すドローイング=ダンス。ドローイング以上にダンスを考えるヒントをもらった気がした。文谷は3月開催のVOCA展2013にも選出されているのだという。その展示にも期待が膨らむ。

2013/01/20(日)(木村覚)

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