artscapeレビュー

岩隈力也 展 LAUNDRY

2013年02月01日号

会期:2013/01/07~2013/01/19

コバヤシ画廊[東京都]

岩隈力也は、生粋の平面作家である。VOCA展に二度出品し、2011年には「ARTIST FILE」展(国立新美術館)にも参加した。色彩の美しい流動性によって対象を描く平面作家として高く評価されてきたと言ってよいだろう。ところが、今回の個展で発表された新作は、これまでの作品と激変していたので驚いた。展示されていたのは、空中にぶら下がった大小さまざまな布の数々。わずかに色が残されているのがわかるが、いずれも皺くちゃに捩れており、「LAUNDRY」というタイトルに示されているように、その見た目はまるで物干し竿に干された洗濯物のようだ。描かれていたのは、犯罪被害者や加害者、そして死者の顔。いずれも水で洗い流しているので、残された図像をはっきりと確認することは難しい。おぼろげに浮かんでくる人の顔が、薄れゆく死者の記憶と照応しているようで、思わず背筋に戦慄が走る。絵画は、描くことではなく消すことによっても成立しうる。むしろそのことに今日的なリアリティーがあることを岩隈は示してみせた。

2013/01/19(土)(福住廉)

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