artscapeレビュー

松永真ポスター100展

2013年02月01日号

会期:2013/01/09~2013/01/31

ギンザ・グラフィック・ギャラリー[東京都]

デザインは常にその時代の企業、社会、地域、人々の生活と密接に結びついて現われるものだから、「時代を超えた」とか「普遍的である」という言葉は必ずしも誉め言葉になるとは限らないのだが、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催されている「松永真ポスター100展」に関しては、「普遍的な」という形容がもっともふさわしいように思う。松永真の自選による約100点のポスターは、資生堂時代の作品、あるいはいまはなきセゾン美術館の展覧会ポスターを除くと、近作ばかりを集めたのだろうというのが最初に見たときの印象であった。実際、チラシのモチーフにもなっている《JAPAN“燃え盛るか日本、燃え尽きるか日本。”》は2001年、《HIROSHIMA APPEALS 2007》は2007年の作品である。ところが、入口で手渡されたパンフレットを片手に改めて作品一つひとつを見てゆくと、1970年代、80年代、90年代、2000年代と、氏の仕事からまんべんなく出品されていることがわかり、あらめて驚かされた。シンプル、ストレート、インパクトのある構成、色彩、書体……。この「新しさ」はいったいなんなのだろうか。パッケージ、CI、ポスターと多岐にわたる松永真のデザイン・ワークであるが、意外にもポスターのみを一覧する展覧会は初めてであるという。過去に手がけたポスターは約1,300点。そのなかから100種類を選んでいる。ではこの100種類はどのような基準で選ばれたものなのだろうか。松永氏によれば、それはやはり「普遍性」であるという。松永氏の仕事のなかには、その時代の文脈で評価され、大ヒットした作品も多数ある。時代を超越した作品ばかりをつくるアーティストではない。しかし、今回のセレクションでは流行が色濃く反映されるファッションなどのモチーフは避け、結果的により「普遍的」なイメージが選ばれることになったという。いずれのポスターも、いま、街角に貼られていても違和感を覚えないのではないか。
 パッケージデザインやCIデザインの多くは短期に消費されるものではなく、長期にわたって使用されることを前提にデザインされる。しかし、一見変わりないように見える企業や商品のロゴも時折リニューアルされる。松永真の代表作のひとつであるスコッティのパッケージも、松永氏自身の手によってアップ・トゥ・デートされてきた。「普遍」は必ずしも「不変」ではないのだ。ここに選ばれた100種類のポスターは、いまの時代感覚における普遍性であり、10年後に松永氏が再び100種類のポスターを選んだとしたら、きっと今回とはまた異なる作品が選ばれ、それでいながら見る者に松永デザインの「普遍性」を印象づけるに違いない。[新川徳彦]

関連レビュー:松永真『ggg Books 別冊 9:松永真』

2013/01/28(月)(SYNK)

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