artscapeレビュー

アルゴ

2013年02月01日号

会期:2012/10/26

ヒューマントラストシネマ渋谷[東京都]

「007スカイフォール」と対照的だったのが、ベン・アフレック監督主演の「アルゴ」。イラン革命の1979年、在イランのアメリカ大使館を舞台にした一大脱出劇をアメリカ人の視点から描いた。大使館を占拠したイラン市民から逃れた大使館員を「映画の撮影」というトリックを用いて救出するという物語は、たしかに痛快ではある。ところが、暴徒と化したイラン人はおろか、街中で米国人を取り囲むイラン人すら凶暴に描き出すなど、その視点があまりにも米国側に偏重しているため、映画をみずから陳腐にしてしまっている。「敵」はあくまでもイランであるという前提は決して揺るがないのである。これほど居直った態度でステレオタイプをなぞる映画は珍しいが、このような一方的な自己肯定を楽しむ余裕は、もはや現代人にはない。

2013/01/16(水)(福住廉)

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