artscapeレビュー

JR展──世界はアートで変わっていく

2013年03月15日号

会期:2013/02/10~2013/06/02

ワタリウム美術館[東京都]

一瞬、東京ステーションギャラリーの展覧会かと思った人もいるに違いない。いないか。JRは、街なかに人の巨大な顔写真を貼りつけていくフランスのストリートアーティストの名前。階段の垂直面に顔写真を少しずつ貼ったり、何軒もの家の壁に部分写真を貼りつけて、遠くから見るとひとつの大きな顔に見える大規模なプロジェクトを手がけている。また、線路の敷かれた土手に顔の下半分を貼り、そこに目の部分を貼りつけた列車がやってきて、通過する一瞬だけ顔写真が完成するパフォーマンスも試みているが、それこそ日本のJRとタイアップしてやってほしいところだ。もっとも新幹線じゃアッという間だけど。まあとにかく街をキャンバスにして(この場合は印画紙か)アートを蔓延させ、そのことで世界を変えていこうとするアクティヴィストといってもいい。ストリートアートなので今回は実作品が展示されるわけでなく、ドキュメント映像での紹介。展示室の一画には写真撮影ブースが設けられ、入場者が撮影するとポスターサイズの顔写真がプリントされ、お持ち帰りができるというサービスもある。この顔のポスターを好きな場所に貼り、それを写真に撮ってワタリウムに送ると美術館のサイトに発表されるという。ただし、撮影された顔写真は自動的にJRのウェブサイトに送られ、肖像権フリーの素材になるらしいからご注意を。

2013/02/09(土)(村田真)

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