artscapeレビュー

京都精華大学 卒業・修了制作展

2013年03月15日号

会期:2013/02/20~2013/02/24

京都市美術館本館・別館[京都府]

京都市美術館で開催された精華大学の芸術学部、デザイン学部の卒業制作展。最近は大学のキャンパスで開催されることも多くなったが、学生たちの高揚感と緊張感に包まれた美術館の卒展の雰囲気は好きだ。芸術学部のほうで記憶に残ったのは映像学科・山本由紀の《ゆらぎ》というサウンドアートのインスタレーション。いくつもの小さなリングが空中にぶら下がっているのだが、それらを軽く引っぱり手を離すと、モビール状に糸で繋がっている金属棒が床に置かれたグラスに当たり、涼やかな音が鳴る仕掛けになっていた。単純だが細部にわたって美しいのが良い。数日前に個展を見た久保文音の女性像を描いた大画面の絵画も力作。絵の具の重ね方は入念だが、多様な筆致と画材を巧みに使った表現が独特の趣で見入ってしまった。デザイン学部では、プロダクトデザイン学科で完成度の高い作品をいくつか見ることができたのが嬉しい。気に入ったのは野崎珠江の《つながレタープロジェクト》。この日は本人が「実演」という看板を出してワークショップを行なっていた。参加者が野崎が用意した3枚綴りのハガキの1枚にメッセージを書き、封筒に入れて誰かに出すという、ただそれだけなのだが、これは最終的には、参加者が手紙を出した相手から野崎にアンケートの1枚が返ってくる(かも知れない)というプログラムになっている。ゲームのようでもあるが、用意されていたオリジナルの切手やレターセット、解説カードもよくできていて単純に楽しい。誰かとのやりとりのなかでも少なくなった、待って過ごすという時間にも思いがめぐる。


久保文音《オモイデノツヅキ》



左=インテリアプロダクトデザイン学科の野崎珠江《つながレタープロジェクト》
右=同、オリジナルの切手が貼られて配布された三連のポストカード

2013/02/23(土)(酒井千穂)

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