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超然孤独の風流遊戯 小林猶治郎展/富田有紀子展

2013年03月15日号

会期:2013/02/17~2013/04/07

練馬区立美術館[東京都]

小林猶治郎は偉大な芸術家というわけではないし、美術史にも出てこないが、ちょっとおもしろい絵を描く画家。若いころ肺を病み、25歳までしか生きられないと宣告されて慶応大学を中退し、好きな絵を描いてすごしてるうちに93歳まで長生きしてしまったという、ならば人生設計ちゃんとやってればぜんぜん違う人生を歩んだかもしれない人。画業は関東大震災後の1920年代から70年近くにおよぶが、出品は初期の20~30年代が大半を占めている。輪郭や陰影のはっきりした粘着質な描法は牧野虎雄に似ているなあと思ったら、牧野に師事したことがあるそうだ。小鳥を描いた絵の上に金網をかぶせて鳥小屋に見立てたり、ゴツゴツした木の幹を四角く組んで額縁にしたり、あれこれ工夫しているのがかわいい。戦後50年代の一時期には時流に乗ったのか抽象も試みている。晩年には簡潔な絵の余白にひとこと添える文人画のような作品にいたったが、考えてみれば絵を売らなかった彼の生き方は文人画に通じるのではないか。ひょっとしたらこういう生き方こそ画家としてもっとも幸せかもしれない。で、その孫が1階で個展を開いてる富田有紀子。富田は祖父と違っておもに花や果実を拡大描写しているが、執拗なまでの描画姿勢が少し似ているかも。

2013/02/16(土)(村田真)

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