artscapeレビュー
寺田就子「あいまのいろざし」
2015年07月15日号
会期:2015/06/09~2015/06/20
galerie 16[京都府]
コップやハンカチ、スーパーボール、本や文房具といった日常的な素材と、ガラスや鏡、トレーシングペーパーなど透明で儚さを感じさせる素材を組み合わせ、詩的なインスタレーションを展開している寺田就子。光の反射や映り込みといった現象を巧みに利用した作品は、ささやかで親密でありながら、見立てや連想がどこまでも広がっていく小宇宙のような空間をつくり出す。
本個展ではタイトルにあるように、既製品と透明な素材にはさまれた「あいま」にそっと効果的に色を配す手つきが効いている。例えば、《レモネードの波紋》と題されたインスタレーションでは、切断面が蛍光イエローに光るアクリルの集光板を使用。下に敷いたハンカチの縞模様と響き合うように置くことで、ありえないはずの四角い波紋が広がっていくような感覚を与える。また、アクリルボックスの上にレコードを置き、底面に紙ジャケットを置いた作品では、宙に浮いているようなレコードの穴から下を覗くと、組み合わされた曲面鏡と赤いボタンが目玉のようにこちらを見返してくる。水の入ったシリンダーを覗けば、小さな飛行機の影が水面に銀色に光る。天井から吊るされたピンクとグリーンのスーパーボールはいつしか、この空想の小宇宙を照らし出す恒星へと変貌する。
上や斜めから覗き込む、しゃがんで見る、などの具体的な身体動作と、想像の世界でのイメージの変換や連想。その両方の運動を、決して声高でなく誘いかける寺田作品は、子どもの頃の宝物をそっと取り出して眺めるような手つきのなかに、感性をゆるやかに解きほぐす魅力をたたえている。
2015/06/20(土)(高嶋慈)