artscapeレビュー
遠藤夏香──河をきりとる
2015年07月15日号
会期:2015/06/03~2015/06/15
代々木アートギャラリー[東京都]
紙にアクリルで、コンサート会場や原宿竹下口やピラミッドの前などに集う人たちを描いている。いや人たちを描いてるというより、その場の空気を描いているというべきか。人たちの輪郭線の内側には骨格や内臓を思わせるムニャムニャした線が引かれ、外側には彼らの動いた軌跡が印され、また彼らの発するオーラみたいなものがにじみ出ている。どうやら彼女は見えるものではなく、むしろ見えないものをこそ描こうとしているように思う。《起きて寝る》と題された2点組の顔の図では、起きた顔からは放射状に、寝てる顔からは同心円状に絵具が置かれ、意識の流れを暗示しているのだが、その顔は死にかけてるようにしか見えない。なんとも不気味な絵。唯一の不満はキャンバスではなく紙に描いてることだが、それも彼女によれば紙が好きとかいった趣味の問題ではなく、キャンバスが肌に合わないからなのだそうだ。こうした皮膚感覚的な偏りが彼女の表現を支えているのかもしれない。
2015/06/05(金)(村田真)