artscapeレビュー

舟越桂「私の中のスフィンクス」

2015年08月01日号

会期:2015/06/27~2015/08/30

兵庫県立美術館[兵庫県]

筆者が舟越桂の作品を知ったのは1990年前後だが、そのときの驚きをいまも新鮮に覚えている。その木彫の半身像は、自分たちと同じような髪形をし、服を着ていた。彫刻なのに着色され、遠くを見つめる目には透き通った玉眼が嵌められていた。つまり舟越の作品には、同時代の等身大の価値観と日本の木彫の伝統が違和感なく同居していたのである。その後は断片的にしか彼の作品に接することがなく、進行する異形化を前に途方に暮れることもあったが、本展によりやっと彼のキャリアを一本の線として捉えることができた。展示はほぼ時系列で構成され、胴体が山のようになっていく過程やスフィンクス登場の必然性がおのずと理解できる。また、木彫作品の周囲には関連するドローイングが配置され、木彫とドローイングの深い関係も理解できた。総点数は、彫刻約30点、ドローイングなど約40点。少ないかと思ったが、実際はこれで十分、お腹がいっぱいになった。やはり彫刻の展示は空間を贅沢に取るべきだと、改めて実感した。

2015/06/27(土)(小吹隆文)

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