artscapeレビュー
古九谷 展
2015年08月01日号
会期:2015/07/04~2015/09/23
戸栗美術館[東京都]
17世紀初頭、伊万里で初めて磁器が焼かれた。初期の製品では白地に青で描く染付が主流であったが、1640年代には上絵の顔料が導入されて赤、黄、緑、紫などの色絵製品が焼かれるようになった。17世紀後半になると、いわゆる柿右衛門様式が登場し、オランダ東インド会社によってヨーロッパ、東南アジアなどへ製品が大量に輸出されるようになる。この柿右衛門様式が登場するまでの初期色絵磁器を「古九谷様式」という。もともと加賀の地に伝世してきた優品が同地の製品として「古九谷」とされていたものが、1970年代以降、発掘調査研究によって有田産説が有力となり、有田焼の様式のひとつとして「古九谷様式」と呼ばれるようになったもの(いくつかの異説があり、産地を巡る論争は決着していない)。特徴としては色遣い、文様に中国磁器の影響が強くみられる。海外輸出が始まる以前の製品が中心なので、ヨーロッパに伝わった製品のデザインとは違う、日本人好みの意匠が中心という印象を受ける。いつものことながら、技術、様式、意匠の展開をていねいに解説したわかりやすい展示。1階小展示室、現代作家の作品紹介コーナーは望月優氏。伊万里焼古陶磁の陶片を白い無地の皿やカップ&ソーサー、ポットなどに組み込んだ作品で、陶片から必ずしもオリジナルの姿を再現するのではなく、自由に形を展開しているところがとても面白い。[新川徳彦]
2015/07/22(水)(SYNK)