artscapeレビュー

天野喜孝「想像を超えた世界」

2015年08月01日号

会期:2015/06/27~2015/08/30

兵庫県立美術館 ギャラリー棟3F[兵庫県]

タツノコプロでのアニメのキャラクターデザインから始まり、ファンタジー小説の挿画・装幀、ゲーム「ファイナル・ファンタジー」のキャラクターデザインを経て、現在はオリジナルの絵画作品を制作している天野喜孝。その類いまれな画業を初めて通観した。特にアニメやゲームの仕事は思い入れのある人が多く、取材に参加した記者や関係者のなかにも興奮を隠し切れない人が少なからず見受けられた。彼は絵画や美術史の高等教育を受けたことがなく、仕事の必要に応じて知識や技術を吸収し、その過程で自分の好みが世紀末美術であることを自覚した。一般的な美術家とは異なるプロセスをたどったことが、作品のオリジナリティに寄与しているのかもしれない。近年の作品は、本人いわく「700年後も退色しないように」、自動車の塗料と仕上げ技術を駆使した極彩色の大作群だ。そこには過去の仕事で創造したキャラクターの変奏が惜しげもなく投入されている。未知の荒野を独力で切り開いた者ならではの境地と言えるだろう。

2015/06/26(金)(小吹隆文)

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