artscapeレビュー
高松次郎 制作の軌跡
2015年08月01日号
会期:2015/04/07~2015/07/05
国立国際美術館[大阪府]
近年、展覧会が複数開催され注目を集めている前衛芸術家/高松次郎(1936-98)の大規模な回顧展。本展の特徴は、絵画・版画・立体作品だけでなく、ドローイングが多く、約280点展示されていること。ドローイングとはそもそも作家の思考と作品の構想を表わすものであるが、それが年代順にたくさんみられることで、作家自身が制作した作品表現の発想と応用の変遷を詳細に検討することができる。高松のシリーズ作品は、「点」「影」「遠近法」「単体」「複合体」「平面上の空間」「形」と本展の展示テーマが名付けるような、人間の視覚とものの認識・世界の把握の仕方に関わる、いわば理論的な仕事ともいえるだけに、大量のドローイングを整理し直して作家の仕事を解釈し、展覧会を構成した意味は大きいだろう。特に今回は高松の「装丁」の仕事も多く展示されており、ドローイングから装丁デザインへと展開していった、互いに連関性をもつ作品群を見て取ることができる。作家の思考の読み解き、作品の謎解きをすることができるたいへん刺激的な展覧会。[竹内有子]
2015/07/04(土)(SYNK)