artscapeレビュー

吉田重信「2011312313」

2015年08月01日号

会期:2015/07/11~2015/07/26

ギャラリー知[京都府]

ギャラリーに展示されているのは、新聞記事を極端に露出アンダーな状態で撮影し、大きく引き伸ばした写真作品4点と、真っ黒なタブロー状の平面作品。前者は、2011年に起きた東日本震災の翌日3月12日とその翌日の13日に発行された地元新聞2紙で、福島県双葉郡浪江町(福島第一原発から10キロ圏内で現在も放射線量が高く帰宅困難地域に指定されている)の販売所に放置されていたものだ。後者にはその新聞の実物を鉛で覆った容器が入っており、作品表面には震災が起こった日時が刻印されている。紙面を見ると当時の緊迫した様子が伝わるが、画面が暗すぎて判読できない部分も少なくない。これは薄れゆく記憶の暗喩であり、それに抗おうとする作者の意志の表われでもある。吉田は福島県いわき市在住の作家で震災の被災者でもあるが、これまでも折に触れ東日本大震災をテーマにした作品を発表してきた。そのブレない姿勢、継続する意志を前にすると、こちらも襟を正さざるをえない。

2015/07/14(火)(小吹隆文)

2015年08月01日号の
artscapeレビュー