artscapeレビュー
新宮晋の宇宙船
2017年05月15日号
会期:2017/03/18~2017/05/07
兵庫県立美術館[兵庫県]
風や水といった自然の力で動く彫刻で知られる新宮晋の個展。新作を中心とした約15点の作品に加え、ドローイングや野外でのプロジェクトの映像も紹介された。
新宮の作品は、「動く彫刻」としてのモビールを大型化させ、複雑な構造計算と厳格な幾何学的形態により、風力や流水の力で生き物のように動き続ける。風車やヨットの帆を思わせる形状に張られた、薄いポリエステルの布が、風を捉えて回転する。風を受けた草原のように、刻々と表情を変える白い布の一面の連なり。シャワーのように降り注ぐ水を受け止め、満たされると重みでひっくり返り、複雑な軌跡を描いて運動し続けるステンレスの杯。二度と同じ動きを繰り返さない、複雑で繊細な揺らぎに満ちた運動は、床や壁に落ちる影や金属が反射する光の美しさもあいまって、いつまで見ていても飽きない魅力にあふれている。
だがそれらが、「美術館」という空間で展示されるとき、魅力的な運動は、空調の操作や調整、扇風機の配置、流水装置の設置といった人工的な補助に支えられてもいる。「エコ」という思考と実践を、(技術的な実用化や産業面での開発ではなく)造形的な美しさにおいて追究する新宮作品だが、作品にとって美術館は「自然」的環境か? という問いをはからずも提起していた。
2017/04/23(日)(高嶋慈)