artscapeレビュー
石黒昭 大理石絵画
2017年05月15日号
会期:2017/04/07~2017/05/06
ロコギャラリー[東京都]
ヨーロッパではしばしば建物の壁に大理石模様が描かれているのを見かける。一種のだまし絵なのだが、日本のトリックアート美術館の出し物とは違い、フェイクなのに堂々として恥じる様子がない。石黒はこの大理石模様を描く職人だったが、いまではそれを美術作品として制作している(それ以外の絵も描くが)。その「大理石絵画」は表面がツルツルのうえ模様が緻密に描かれているため、どう見ても大理石そのもの。今回はそんなリアルな大理石絵画に加え、大理石模様を抽象表現主義的に発展させた新作も発表している。これは美しい。たしかに大理石といわれれば大理石のようにも見えるが、しかし青、赤、緑とカラフルで、しかも霜降り肉のサシのように画面全体を覆う白い絵具が盛り上がっているので、本家本元の大理石から逸脱しようとしているようにも見えるのだ。これはもはや大理石のフェイクであることをやめ、「大理石絵画」という新たなジャンルとして自律しつつあるのかもしれない。
2017/04/28(金)(村田真)