artscapeレビュー
千田高詩との対話
2017年05月15日号
会期:2017/03/27~2017/04/08
BankARTスタジオNYK[神奈川県]
長く横浜を拠点に活動を続けた千田高詩の生誕100年を記念する回顧展。戦前に東京美術学校を出て、50-60年代には読売アンデパンダン展に出品、来日したアンフォルメルの推進者ミシェル・タピエにも注目されたという。会場には「モダーン」という言葉が似合う抽象絵画が並ぶが、彼の功績は作品そのものよりもむしろ美術教育者としての側面にあるようだ。1965年に弘明寺に「創造のアトリエ」を開き、「ワークショップ」という言葉がなかった時代から創造性を重視する美術教育を実践。彼の提唱した「みんなみんなアーティスト」は、思想的背景は異なるとはいえ、世代的に近いヨーゼフ・ボイスの「人間はだれでも芸術家である」を思い出させる。世が世なら千田も世界的に影響力を持っただろうか。
2017/04/02(日)(村田真)